さ行
・債権(さいけん)
特定人が特定人に対して一定の財産上の行為(給付)を要求する権利。契約(特に売買契約)が主な発生原因だが、事務管理・不当利得・不法行為も原因となる。
・債権譲渡(さいけんじょうと)
債権の同一性を保ちつつ債権を移転する契約のこと。
・再婚禁止期間(さいこんきんしきかん)
女性が前婚の取消しまたは解消の日以後、再婚できない一定の期間のこと。日本の民法上は6か月とされている(733条1項)。
・財産分与請求権(ざいさんぶんよせいきゅうけん)
離婚した男女の一方が他方に対して財産の分与を求める権利(民法768条、771条)。財産分与の請求は、離婚後2年以内にしなければならない(768条2項)。
・再代襲(さいだいしゅう)
被相続者の子に死亡などの代襲原因が発生し、さらに、代襲相続人であるその子(被相続人の孫)についても代襲原因が発生した場合には、代襲相続人についても代襲が生じる(民法887条3項)。これを再代襲という。
・裁判員(さいばんいん)
国民の中から選任され、裁判官と共に一定の重大犯罪の刑事訴訟手続に関与する者(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律<裁判員法>1条等参照)。選挙人名簿をもとに作られた裁判員候補者名簿の中から、事件ごとに裁判所における選任手続によって選ばれ、公判に出席し評議・評決を行う。
・裁判上の和解(さいばんじょうのわかい)
裁判所が関与する和解のこと。訴訟上の和解と起訴前の和解=即決和解がある。
・債務不履行(さいむふりこう)
一定の債務を負う者が、正当な理由がないのに本来の取り決めどおりの義務(債務)を行わないことをいう。
・債務名義(さいむめいぎ)
債務者・債権者間に私法上の給付請求権があるということを表示し、この請求権を強制執行によって実現できることを法律上認める公の文書のこと(民事執行法22条)。
・先取特権(さきどりとっけん)
社会政策的配慮・公平の見地から、法律の定める特殊な債権を持つものが債務者の総財産あるいは特定の動産・不動産から、優先弁済を受けることができるとする法定担保物権。
・差押え(さしおさえ)
確定判決その他の債務名義にもとづく金銭債権の強制執行の手続として、債務者の財産の事実上または法律上の処分を禁止し、債務者の財産を確保するために行われるものである(民法154条参照)。
・差押禁止財産(さしおさえきんしざいさん)
債務者に属している財産であっても、強制執行の目的物として差し押さえることを禁じられる財産のこと(民事執行法131・152条)。
・差止請求(さしとめせいきゅう)
自分にとって不利益となるおそれのある他人の行為をやめるように求めること。公害訴訟で損害賠償請求とともになされることが多い。
・三六協定(さぶろくきょうてい)
使用者が労働者に残業や休日出勤をさせるには、あらかじめ労使協定を行って、労働基準監督署に届け出なければならない。この協定について、労働基準法36条が定めていることから三六協定と呼ぶ。
・死因贈与(しいんぞうよ)
贈与者が死亡時に効力を発生させるものと定めて、生前にあらかじめ契約しておく贈与のこと(民法554条)。
・敷金(しききん)
不動産、特に家屋の賃借人が未払い賃料や損害金などの債務を担保するために、契約の成立に際してあらかじめ賃貸人に差し入れる金銭のこと(民法316条・619条)。賃貸借契約が終了すると、賃借人に未払い賃料や損害金の債務がない限り返還される。
・時効(じこう)
①私法上は、一定の事実状態が法定期間継続した場合に、その事実状態が真実の権利関係に合致するかどうか問わないで、権利の取得や消滅という法律効果を認める制度のこと。権利取得の効果を認めるのが取得時効、権利消滅の効果を認めるのが消滅時効である。②刑事法上は、一定の期間が経過した場合に国家の刑罰権を消滅させる制度のこと。
・時効期間(じこうきかん)
権利を行使することができる時、たとえば債権では弁済期が到来した時から起算し(民法166条)、一般の債権では10年(同法167条1項)、商事債権では5年(商法522条)の期間をいう。
・時効の援用(じこうのえんよう)
時効によって利益を受ける者が、時効の利益を受ける意思を表示すること。
・時効の中断(じこうのちゅうだん)
時効の基礎となる事実状態(たとえば所有者らしい状態、債務が存在しないような状態など)と相いれない一定の事実(たとえば所有者から占有者に対する訴えの提起、債権者の債務者に対する訴えの提起など)が生じた場合に、時効期間の進行を中断させること。中断があれば、すでに進行した時効期間はまったく効力を失い、中断事由の終わった時から新たに時効期間が進行を開始する(民法157条)。
・事後強盗罪(じごごうとうざい)
窃盗罪の犯人が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕されることを免れ、または罪跡(ざいせき=犯罪の証拠となるもの)を隠滅するために、暴行・脅迫をはたらく罪。
・自己破産(じこはさん)
債務者自身の申立てによって開始される破産手続のこと。
・自首(じしゅ)
捜査機関に発覚する前に、犯人が自ら捜査機関に犯罪事実を告白すること。
・執行猶予(しっこうゆうよ)
刑の執行を一定期間猶予し、その期間内が無事に経過した場合には、刑を科さないこととする制度。
・失踪宣告(しっそうせんこく)
一定期間生死不明の状態が続いた場合には、その人をとりまく私法関係の限度で、その人が死亡したものとみなす制度(民法30条以下)。
・自動車損害賠償責任保険(じどうしゃそんがいばいしょうせきにんほけん)
自動車事故による人身損害について、立証責任や加害者の資力不足から被害者を保護するため、その賠償責任を負担する強制保険。これにより、挙証責任が転換され、他人の財物を毀損した場合の損害も塡補されない。また、被害者の保険者への直接請求権が認められている。
・事務管理(じむかんり)
法律上の義務がないのに、他人のために、本人の意思および利益に適合する、他人の事務を処理すること。①違法性の阻却②管理者の義務の発生③本人の義務の発生という法律効果を生じる。
・借地借家法(しゃくちしゃくやほう)
借地法、借家法、建物保護法を統合した法律。
・就業規則(しゅうぎょうきそく)
賃金その他の労働条件、職場の規律などについて、使用者が定める規則(労働基準法89条以下)。
・取得時効(しゅとくじこう)
権利者らしい状態が一定期間継続することによって、権利取得の効果が与えられる時効(民法162条以下)。
・受領遅滞(じゅりょうちたい)
債務者が本来の取り決めどおり義務を果たそうとしたにもかかわらず、債権者がそれに協力せず、あるいは協力できないために、債務の履行が遅れている状態にあること(民法413条)。
・準備書面(じゅんびしょめん)
民事訴訟で、口頭弁論を能率よく行い集中審理を実現するため、次の口頭弁論の期日に陳述する事項を記載して当事者が裁判所に提出し、並行して相手方当事者に直送する書面(民事訴訟法161条以下)。
・傷害罪(しょうがいざい)
人の生理的機能に障害を与える傷害行為を処罰し、人の身体の安全を保護するもの。
・上告(じょうこく)
民事訴訟においては、第二審の裁判所の確定していない終局判決に対して、不服を申し立てる上訴のこと。刑事訴訟においては、基本的には、控訴審の判決に対する不服申立てのこと。
・証拠保全(しょうこほぜん)
証拠調べ期日に証拠調べを行ったのではその証拠を使用することが困難であるような場合に、あらかじめ証拠調べを行ってその内容を確保しておくこと。
・使用者責任(しようしゃせきにん)
①使用関係があること②「事業の執行について」なされたものであること③被用者が一般の不法行為の要件を充たすこと④免責事由がないことを要件に、被用者が事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならないという使用者の不法行為責任(民法715条)。
・使用貸借(しようたいしゃく)
友人に本を貸す場合のように、ある人(貸主)が相手方(借主)に無償で貸すことにして目的物を引き渡し、借主が使用・収益した後に返還する契約(民法593条以下)。
・譲渡担保(じょうとたんぽ)
抵当権を設定できない動産を引き渡さずに担保目的物にしたいという需要と、面倒な抵当権の設定、実行手続を回避するため、判例により認められている、法律形式上、者の所有権を移転させ、消費賃借上の債権を担保する制度。判例は形式を重視して、所有権は債権者に移転するとしている。
・証人尋問(しょうにんじんもん)
①民事訴訟上は、証人に対して口頭で質問し、証明すべき事実に関して証人が経験した事実を供述させ、その証言を証拠とする証拠調べ手続のこと。②刑事訴訟上は、第三者を証人として喚問し、証人が経験にもとづいて知り得た事実を供述させて、その証言を証拠とする手続のこと(刑事訴訟法143条以下)。
・少年法(しょうねんほう)
少年(20歳未満の者)は心身が未成熟で社会的経験が貧しいので、犯罪(非行)少年に対しては、その健全な育成を期待し、性格の矯正および環境の調整に関する保護処分をもってのぞむという基本理念にもとづいて、少年に適用される、刑法・刑事訴訟法の特別法。
・消費貸借(しょうひたいしゃく)
金銭の貸借のように、当事者の一方が金銭その他の物を相手方から借りて、後にこれと同種・同等・同量の物を返すことを約束すること(民法587条以下)。
・消滅時効(しょうめつじこう)
権利不行使の状態が一定期間継続することによってその権利が消滅するという効果を生じる時効(民法166条以下)。
・職務質問(しょくむしつもん)
警察官が、挙動不審で、①何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者、または②すでに行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると合理的に認められる者に対し、犯罪の嫌疑の有無などを確認するために行う質問。
・処分禁止の仮処分(しょぶんきんしのかりしょぶん)
目的物の現状維持と、訴訟中、当事者を固定しておくため、債務者が目的物について、譲渡、担保権の設定などの処分行為を行うことを禁止する仮処分。
・所有権(しょゆうけん)
法令の制限内において、物を自由に使用・収益・処分できる権利(民法206条以下)。
・所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)
代金が後払いの形をとる売買において、代金全部が完済されるまでの間、その目的物の所有権が売主に留保される制度。
・親等(しんとう)
親族間の遠近や親族関係の緊密さを計る単位・尺度のこと。
・心裡留保(しんりりゅうほ)
表示者の効果意思に対応した内心的意思が欠けており、同時に表意者がそのことを知っている場合を指す。
・請求異議の訴え(せいきゅういぎのうったえ)
債務名義が形成された後、執行開始までに実体法上は請求権が消滅している場合において、いまだ債務名義は有効であるゆえになされる執行に対して債務者が主張する訴え(民事執行法35条)。
・請求の原因(せいきゅうのげんいん)
請求の趣旨を補足して、請求を特定するのに必要な事実(民事訴訟法133条2項2号)。
・請求の趣旨(せいきゅうのしゅし)
原告が訴えによって求める判決の、主文の内容の簡潔かつ明確な表示(民事訴訟法133条2項2号)。
・製造物責任法(せいぞうぶつせきにんほう)
平成7年7月から施工された、消費者保護のための法律。製造業者の無過失責任を定めており、これは過失責任の原則を定めた一般不法行為の特則である。
・正当事由(せいとうじゆう)
更新がある借地契約・建物賃貸借契約の更新拒絶のために必要な条件。
・正当防衛(せいとうぼうえい)
急な不正の侵害に対して自分もしくは他人の権利を防衛するためにやむを得ずにした行為(刑法36条)。
・成年後見制度(せいねんこうけんせいど)
判断能力が不十分な成年者のための後見制度。①法定後見制度と②任意後見制度がある。
・占有移転禁止の仮処分(せんゆういてんきんしのかりしょぶん)
物の引渡し・明渡し請求権の保全のために、その物の現状を維持する必要から、目的物の占有の移転を禁止する仮処分。
・占有回収の訴え(せんゆうかいしゅうのうったえ)
占有の侵害が、妨害の程度を超え、侵奪の程度に達した場合に、占有の回収を目的として、占有の返還と損害賠償を請求するもの(民法200条1項)。
・占有保全の訴え(せんゆうほぜんのうったえ)
占有者が占有を妨害されるおそれがある場合に、占有の現状を保全するために、事前の妨害予防請求あるいは損害賠償の担保請求を行うもの(民法199条)。
・相殺(そうさい)
手続の簡易化や当事者間の公平のため、2者が互いに相手方に対して同種の債権を持っている場合に、その債権・債務を対等額において消滅させること(民法505条以下)。
・相続回復請求権(そうぞくかいふくせいきゅうけん)
真の相続人が表見相続人に対し相続権の確認を求めることに加え、相続財産の返還など相続権の侵害を排除してその回復を求める権利(民法884条)。
・相続放棄(そうぞくほうき)
相続開始後に相続人が相続の効果を拒否する意思表示のこと(民法938条以下)。相続財産が債務超過である場合、相続人が意思に反して過大な債務を負わせることを回避するための制度。
・訴額(そがく)
原告が、勝訴することにより得られると主張する利益を金銭で見積もった、訴訟物の目的の金額(民法訴訟法8条)。
・訴訟告知(そしょうこくち)
訴訟に法的な利害関係を有する第三者に手続関与の機会を保障し、被告知者に敗訴責任を分担させるため、訴訟係属中に、当事者が訴訟外の第三者に対して、当該訴訟が係属しているという事実を通知すること(民事訴訟法53条)。
・訴訟参加(そしょうさんか)
係属している訴訟について何らかの利害を有する者が、その訴訟に加入すること(民事訴訟法42条以下)。
・訴訟上の和解(そしょうじょうのわかい)
訴訟の係属中に、当事者双方が主張を譲り合って訴訟を終わらせる内容の、訴訟期日における合意(民事訴訟法124条)。
・訴訟代理人(そしょうだいりにん)
訴訟における自己の活動を積極的に拡大・充実させるため、当事者本人の意思によって選任される、訴訟上の代理人。
・損益相殺(そんえきそうさい)
損害の公平な負担を図るため、不法行為によって損害を被った者が、それと同一の原因により利益を受ける場合、損害賠償は、利益額を控除した金額に減額されること。
・損害賠償(そんがいばいしょう)
契約上の債務不履行や不法行為により一定の損害生じた場合に、それを塡補して、損害がなかったのと同じにすること。
・損害賠償額の予定(そんがいばいしょうがくのよてい)
①損害額の算定が困難な損害が発生したとき、その額の証明を回避するため、②損害の拡大が予想される場合のリスクを回避するため、当事者間であらかじめ損害賠償の金額を合意しておくこと。