酔っぱらって人を殴ってしまいました。見通しについて教えてください。
やってしまった行為は刑法上の暴行罪または傷害罪に該当します(多くのケースでは診断書が出るかどうかによって異なります)。
その法定刑は,暴行罪であれば2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料,傷害罪であれば15年以下の懲役又は50万円以下の罰金と定められています。
具体的な量刑を決める基準は,被害額や弁償をしたかどうか,被害者が許してくれたかどうか,同じようなことをやったことがないかなど,様々な要素で決まります。場合によっては,初犯でも思い処分となる可能性もあります。
一番大きいのは,きちんと被害者の対応をしたかどうかでしょう。初犯で,起訴前に示談が成立し被害者からの許しがもらえた場合,不起訴処分も期待できます。
逆に,被害者が許してくれず,被害弁償もしなかった場合は,被害金が少なかった場合でも罰金刑は覚悟する必要があるでしょう。被害が大きい場合や前科前歴がある場合は,罰金でも許してもらえず,初犯でも執行猶予が付かず実刑になることも珍しいことではありません。
暴行や傷害の事案で寛大な処分を求めるためには,被害者対応をはじめとする初動の動きが極めて重要です。
コンビニで万引きをして捕まってしまいました。今後の流れを知りたいです。
万引きは刑法上の窃盗罪に該当し,その法定刑は10年以下の懲役または50万円以下の罰金と定められています。「万引きなんか大したことない」と思うかもしれませんが,重い刑罰が科されることもあります。買い取れば問題ないと考える方もいるかもしれませんが,量刑には影響しうるものの,被害品を買い取ったことで犯罪でなくなるわけではありません。
具体的な量刑を決める基準は,被害額や弁償をしたかどうか,被害者が許してくれたかどうか,同じようなことをやったことがないかなど,様々な要素で決まります。
一番大きいのは,きちんと被害者の対応をしたかどうかでしょう。初犯で,起訴前に示談が成立し被害者からの許しがもらえた場合,不起訴処分も期待できます。
逆に,被害者が許してくれず,被害弁償もしなかった場合は,被害金が少なかった場合でも罰金刑は覚悟する必要があるでしょう。被害金が大きい場合や前科前歴がある場合は,罰金でも許してもらえず,初犯でも執行猶予が付かず実刑になることも珍しいことではありません。
窃盗の事案で寛大な処分を求めるためには,被害者対応をはじめとする初動の動きが極めて重要です。
罪を犯したと疑われていますが,全く身に覚えがありません。どうすればいいのでしょうか。
身に覚えのないことで犯人と疑われ,取り調べを受けることは,どの方にもあり得ることです。否認している事件では,警察や検察の取り調べも自白を導き出そうと熾烈なものになりがちで,残念ながらそれに負け,やってもいない犯罪の自白をしてしまうことはまれにあることです。そうなった場合,刑事裁判でも言い分を聞いてもらえず,有罪判決が出てしまう可能性が高くなってしまいます。
このような事態に巻き込まれてしまった場合,何よりも重要なことは,真っ先に弁護士に接見・面会させ,助言を仰ぐことです。事案にもよりますが,おかしな調書を作成してしまった後で弁護士に相談しても手遅れということはありえます。検察官や警察官は調書を作成しようと試みますが,サインする前に必ず弁護士に相談するようにしてください。
一般的な対応としては,否認事件においては,のちに正式な刑事裁判で争うことを前提に,調書を作らない,というものがあり,当事務所でも否認事件では基本的に調書は作らないよう指導します。また,調書以外でも,反省文やメモ書きのようなものを作ろうと企てる警察官も存在しますが,当然,そのような書面も作成しません。
否認事件は,認め事件と比較して難易度が高く,経験のある弁護士に依頼し対策をとる必要があります。一刻を争いますので,万一,ご自身やご家族ご友人がそのような事態に巻き込まれたら,弁護士に相談することをご検討ください。
検察官から被害者と示談をするよう言われました。どうすればいいのでしょうか。
比較的軽微な刑事事件(窃盗,暴行,詐欺,傷害など)の被疑者(容疑者)として検察官や警察官から取り調べを受け,事実関係については争っていない場合,検察官や警察官から,被害者と示談をするようにと言われることがよくあります。
このような場合,多くは,被害者と示談が成立すれば不起訴となり,罰金刑や懲役刑を受けずに済む種の事件ということです。
被害者の方が理解のある方で,話を聞いてくれる場合はありがたいのですが,残念ながらそのような方はめったにいません。被害者感情からすればやむを得ないことです。検察官や警察官も被害者の連絡先を直接本人に知らせることは好んでは行いません。
このような場合,弁護人を選任して,検察官や警察官に「弁護士限り」ということで,被害者の承諾をとって連絡先を通知するという実務が行われています。もちろん,弁護士限りであっても連絡先を教えてくれない方もいますが,比較的まれのように思います。
弁護士は,被害者と個別に連絡を取り,必要があれば面会し,謝罪をして,示談金を支払い,宥恕(許すという意味です)をもらうよう努力します。そのうえで,後々に問題にならないよう書面をしっかり作成し,検察官に提出し不起訴処分を求める意見書を提出し,不起訴処分をもらえるよう申し入れを行います。
犯罪に巻き込まれ、被害を受けました。被害者の立場でどのようなことができますか?
【事例】道を歩いていたら、数人に囲まれて暴力を受け、財布を奪われてしまいました。犯人が捕まったのですが、財布は戻ってきません。どうすればいいのでしょうか。
【答え】
日本の裁判手続きは、検察官が起訴し、被告人(犯人)が防御するというシステムを取っており、原則として被害者は当事者ではありません。裁判前の手続きとして、警察官や検察官の取り調べを受けたり、実況検分に立ち会ったりすることが主な役割です。また、犯人が犯行を否認する場合は、証人として裁判所で証言することを求められることもあります。
平成21年から、被害者意見陳述という制度が導入されました。検察官に申告することで、現在の心情や意見を裁判の中で陳述することができると言う制度です。事実関係の主張はできませんが、裁判官に被害者としてどのように思っているかを理解してもらう場となります。
また、一定の重い犯罪(殺人や強姦など)に限られますが、被害者や被害者の委託を受けた弁護士が刑事裁判に参加することができる被害者参加制度も導入されました。この制度を利用すれば、被害者が商人や被告人に直接尋問をすることができます。弁護士を依頼する資力がない場合は、法テラスの援助を受けることも可能です。
被告人側から(実際には被告人についている弁護士から)、示談のために被害弁償の提供があることもあります。事件によっては、民事訴訟を起こすことは経済的に割に合わないケースも多いため、被害回復のために受け取ることも検討してもいいでしょう。ただし、被害弁償を受けたり示談をしたりすれば、判決にあたって被告人に有利に働きますので注意が必要です。
被告人から被害弁償がない場合は、民事訴訟を提起する、損害賠償の申立てをする(一定の犯罪に限られます)、犯罪被害者給付制度を利用する(一定の犯罪に限られます)などの方法がありますが、どれも一長一短です。
犯罪被害に遭った場合、どのような方法がとれるかはケースごとに大きく異なりますので、弁護士に相談することが適切でしょう。
弁護人の選任手続きについてお聞かせください
【事例】逮捕された場合、どのように弁護人を付ければよいのでしょうか。国選とか当番とかいう言葉を聞いたことがありますが、何のことでしょうか。
【答え】弁護人選任権は憲法34条で認められています。弁護人は、家族が面会できないときに面会してくれたり、違法な捜査を防止するようけん制してくれたり、検察官と交渉して早期の開放のために尽力してくれます。逮捕された人と弁護士の間に信頼関係が無ければ弁護活動も暗礁に乗り上げてしまうので、友人知人で、弁護士の知り合いがいる方は、その弁護士を頼ってみてもいいでしょう。
被疑者国選弁護という制度は、一定以上の刑の罪(殺人、放火、傷害、詐欺、窃盗などの法定刑が長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる罪)で勾留されてしまった場合に、原告として弁護士費用の負担なしに弁護士を付けることができる制度です。資力申告書を出すことで被疑者国選弁護人が選任されます。資力が十分な場合、私選弁護人になる人がいなかった場合に初めて国選弁護人が選任されます。
被告人国選弁護という制度は、刑事裁判への立会いを含む弁護活動を、原則として費用負担なしに弁護士を付けることができる制度です。被疑者国選弁護人が付いていた場合、起訴後、そのまま被告人国選に移行します。また、被疑者国選弁護人が付いていなかった場合、起訴後、罪の重さにかかわらず被告人国選弁護人を付けることができます。
当番弁護という制度は、国選弁護とは似て非なるものです。逮捕された人は法律に詳しくない人がほとんどであり、一刻も早く、弁護士に相談することが重要です。そこで、各地の弁護士会が、逮捕勾留されてしまった人に対し、初回だけ弁護士会の負担で弁護士を派遣し、今後の流れ等について教示をしてくれる制度です。警察の留置係に当番弁護士を呼ぶよう依頼すれば、原則としてその日のうちに弁護士が接見します。接見した弁護士が、そのまま私選弁護や被疑者国選弁護を担当することもあります。
なお、被疑者援助という制度もあります。これは、逮捕勾留されていても軽微な内容であるため国選を使うことができず、お金もないので私選弁護を頼むこともできない場合に、法テラスという組織が弁護士費用を立て替えてくれる制度です。立替となっていますが、多くの場合は償還が免除されています。詳しくは弁護士にお問い合わせください。
保釈制度とは何でしょうか?
【事例】罪を犯して逮捕されても、保釈をすることができると聞きました。保釈とは何でしょうか。どのような手続きで保釈できますか。保釈をすれば無罪になるのですか。
【答え】
保釈とは、保釈保証金の納付を条件として、勾留の執行を停止し、身柄を解く制度です。身柄を解かれると言っても、刑事裁判を受けずに済むということはなく、裁判の日には自宅から出頭することになります。なお、保釈が認められるのは、検察官が起訴した場合(刑事裁判を受けることになってしまった場合)であり、起訴前の保釈は認められていません。
保釈がされるためには、裁判所が決めた保釈保証金を納めなければなりません。保釈保証金の額は、事案によって異なりますが、一般的な事件では200万円前後であることが多いでしょう。保釈保証金が無い場合、保釈支援のための協会から借り入れることもできます(手数料が取られます)。
保釈保証金は、被告人が逃走したり裁判への出頭を拒否したりしない限り、裁判後に返還されます(有罪判決の場合でも同じです)。実際に保釈保証金が没収されるケースはきわめて稀です。
保釈制度は、このように不必要な身柄拘束を解くものですが、どのようなケースでも認められるわけではありません。裁判所は、保釈請求があった場合、罪証隠滅のおそれの有無や逃走の危険性などを検討して、保釈を許すか、許すとしても保釈保証金をいくらにするのかを決めます。事案によっては、いくらお金を積んでも保釈が許されないケースも少なくありません(一般的には、否認している事件で保釈を認めてもらうことは困難なことが多いです)。
保釈請求については、必要書類等もありますので、担当の信頼できる弁護人にお願いするのがよいでしょう。
警察署での面会や差し入れについて
【事例】お恥ずかしい話ですが、私の知り合いが逮捕されて、警察署で勾留されることになりました。面会や差し入れの概要について教えてください。
【答え】警察などに勾留されている人は、法令の範囲内で、警察官立会いの下、接見(面会)を行うことができます。警察署によって異なりますが、弁護人以外の方は、平日のお昼を除く日中に限定されており、時間も15分程度に制約されるのが通常です。警察署によっては面会室が少なく、相当な時間待たされることもあります。なお、面会可能時間は警察署によって異なりますので、事前に警察の留置係に連絡するとよいでしょう。
面会に関して注意してほしいことは、一日1グループに限られているということです。面会に行っても、既にほかの方が面会済みであった場合は面会できないことになりますので、注意してください。
身柄を勾留されると、所持品はほぼすべて留置係に管理されます。最低限のものは支給されますが、十分とは言えません。洋服や下着、本や雑誌などを差し入れてもよいでしょう。
また、差し入れに関して、留置されている人は中で、お弁当や新聞などの買い物ができます。こういった買い物のために、お金を差し入れすることもできます。