自己破産をすると、財産をすべて失ってしまうのでしょうか?
【事例】自己破産についてお聞きしますが、自己破産をすると住宅や貯金など全ての財産を失ってしまうと聞いたことがあります。これは本当なのでしょうか。本当だとしたら、自己破産をした後、どうやって生活をすればいいのでしょうか。
【答え】ご質問にもあるとおり、破産手続きをした場合、原則として、破産者は財産の管理処分権を失います。財産がある場合、破産管財人が管理することになります。
しかし、破産しても全ての財産を失うとまではいい切れません。法律上、破産後においても破産者が管理できる財産(これを「自由財産」といいます)が定められています。自由財産として法律で定められているのは、以下の通りです(破産法34条3項)。
1 99万円以下の貯金
2 法律上、差押が禁止されている財産
3 破産開始後に取得した財産
このうち、2について補足すると、生活に欠くことのできない財産(家財道具など)は、法律上差押えが禁止されています。すなわち、自己破産をしても、生活ができなくなるほど財産を失うことはないのです。
また、生命保険は原則として解約され、解約返戻金が債権者の配当に充てられますが(解約返戻金の金額次第では自由財産になることもあります)、簡易生命保険の場合、平成3年3月31日以前に契約したものについては解約されません。
さらに、破産法は、「自己破産の拡張」という制度を設けています。これは、上記の自由財産に当たらない場合であっても、破産管財人の意見を聞いて、裁判所が必要により、本来は自由財産ではなく破産管財人が管理処分すべき財産を破産者の手元に残すことを認めてよいというものです。
なお、破産者の財産と破産者の家族や会社の財産とは基本的には関係ありません。密接な関係に立っているからといって、家族や会社の財産を破産者の債務の支払いに提供しなければならないことはありません(連帯保証人になっている場合は除きます)。
最後に、財産を失いたくないからといって財産隠しをしたうえで破産手続開始決定をすると、詐欺破産罪という犯罪になります(10年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科)。絶対にそのような行為はやめてください。