人身事故に巻き込まれた際に請求できるお金の項目を教えてください。
【事例】私は、車を運転中、他の車に衝突され、病院に行きました。相手方保険会社に損害賠償請求をしようと思っているのですが、どのような請求ができますか?
【答え】人身事故の場合、主に、以下の項目が請求できます。実際には各々のケースによって異なりますので、弁護士にご相談ください。
① 治療費
事故で負傷した病院代は当然に請求できます。また、病状を証明するための診断書代も当然に請求できます。
ただし、怪我の治療のために鍼灸院や整骨院に行ったり、東洋医学による治療を受けた場合、保険会社との間で、必要な治療であったかが争いになる可能性があります。変わったケースでは、温泉治療費や言語障害の症状改善のためのスイミングスクール費用が問題になったケースがあります。
話し合いで決着がつかない場合、裁判をすることを余儀なくされます。治療の前に、保険会社に確認を取るのも一考でしょう。
② 入通院慰謝料
交通事故に遭って傷害を負った人が病院にどの程度入通院したかによって決められます。たとえば、2カ月入院、8カ月通院した場合、194万円の慰謝料を請求することができます(病状や通院ペースによって上下することはあります。特に、むちうち症で他覚症状が無い場合は基準が大幅に下がり、143万円程度になります)。
保険会社は独自の基準を持ち出し、慰謝料額を低く見積もってきますが、弁護士が入ることによってより有利な基準を使うことができます。
また、保険会社が、不必要な通院だと判断した場合も争いになります。この場合、裁判にせざるを得ないでしょう。
③ 入院雑費
入院雑費は、実際にかかった費用ではなく、1日1500円の基準で認められます(弁護士が入った場合)。実際にかかった費用が膨大で1500円ではカバーできないば場合、領収書を取って請求することになります。
④ 交通費
病院に通院するためにかかった費用も当然に請求できます。もっとも、不必要に交通費を使った場合は、より安い限度でのみ認められることもあります(たとえば、電車を利用することが可能であるのに、タクシーを使用した場合など)。
また、付添人が必要だった場合、その交通費も請求できる余地があります。
⑤ 付添看護費
病院の指示で付添人が必要とされた場合や、それ以外でも付添の必要があるとされた場合(たとえば乳幼児が被害者の場合)、付添看護費が認められます。職業付添人の場合は全額、近親者付添人の場合は1日6500円が認められるのが通例です(実際の態様によって増減します)。
⑥ 後遺傷害慰謝料
上に述べた入通院慰謝料とは別個の項目です。後遺障害(後遺症と急性期症状が治癒した後も、なお残ってしまった機能障害や神経症状などの症状や障害のこと)になってしまった場合に認められます。
保険会社基準と弁護士の基準で最も差がある項目といえます。例えば、もっとも軽傷な14級の場合でも、保険会社の基準は32万円~75万円程度であるのに対し、弁護士基準では110万円になります。
後遺障害の場合、特に弁護士が入る必要性のあるケースといえるでしょう。
⑦ 後遺障害逸失利益
後遺障害になった場合、運動能力が一定割合で喪失したとされます(たとえば、14級では5%の運動能力が喪失したことになります)。この割合に応じて、事故が無かった場合に比べてどの程度収入が減ったかによって決められます。
計算式は複雑で、資料も必要とされますので、正確な額は弁護士に計算してもらうことをお勧めします。
⑧ 休業損害
事故によって仕事を休まざるを得なかった場合、その分の減収を請求できます。現実の収入源が無くても、有給休暇を使用した場合、休業損害が認められます。さらに、ボーナスが支給されなくなってしまったり、昇進に響いた場合、その分も請求できる余地があります。
⑨ 弁護士費用
請求額の1割が認められます。実際に弁護士に支払った額がいくらであっても、請求額の1割になります。ただし、任意の交渉によってはまず認められず、裁判を提起した場合のみ認められるのが一般です。