あ行
・遺言(いごん)
一定の方式に従い、死後の法律関係を定める単独の最終意思決定の表示。その法律効果は遺言者の死後発生する。
・遺言の撤回(いごんのてっかい)
遺言の方法により、前の遺言を①撤回する、または②その効力を否定することを遺言の撤回という。
・遺産分割(いさんぶんかつ)
共同相続の場合に、共有となっている遺産を相続分に応じて分割すること(民法906条以下)。原則分割請求はいつでもできるが、手続きをふめば一定期間分割を禁止できる(908条、256条、907条3項)。
・意思能力(いしのうりょく)
私法上の法律関係では私的自治の原則が妥当するため、法律関係が有効に成立するには、各人が法律関係を発生・変更・消滅させる意思を形成した上で表現し、その結果を判断・予測する知的能力を持つ必要がある。この能力を意思能力という。
・慰謝料(いしゃりょう)
精神的な損害に対して支払われる損害賠償金。民法の不法行為において明文で認められており(民法710条)、その算定は裁判官の自由裁量に任されている。
・遺贈(いぞう)
遺言によって遺産の全部または一部を無償で、あるいは負担付きで他者に贈与すること。
・一部請求(いちぶせいきゅう)
数量的に可分な債権の一部のみを請求すること。判例は、相手方の手続保障の要請に鑑み、前訴で一部請求が明示されている場合には訴訟物はその一部に限定され、残部請求の後訴は許されると考えている。
・一括売却(いっかつばいきゃく)
執行裁判所の自由裁量により、不動産執行において、その相互利用関係からみて適当な場合に、複数の不動産を一括して同一の買受人に買い受けさせること。
・囲繞地(いにょうち)
ある土地が他の土地に囲まれているため公路に通じていないとき、その囲まれている土地を袋地(ふくろち)、囲んでいる土地を囲繞地と呼ぶことがある。袋地の所有者は囲繞地通行権を有する。
・委任(いにん)
当事者の一方が法律行為やその他事務処理を相手方に委託し、相手方がこれを承諾することにより成立する無償・片務・諾成契約(民法643条)。
・遺留分(いりゅうぶん)
一定の相続人のために必ず遺産の一定割合を保留する法律上の制約を被相続人に課した(民法1028条以下)。遺留分はこの一定の割合を指す。
・遺留分減殺請求(いりゅうぶんげんさいせいきゅう)
現存の積極的相続財産から遺贈や贈与を差し引くと遺留分の額に達しない場合、遺留分権利者およびその継承人は遺留分を保全するのに必要な限度でまず遺贈に対し、次に贈与に対し新しいものから順に、その履行を拒絶する。既に給付された財産については返還請求ができる(民法1031条)。
・因果関係(いんがかんけい)
行為と結果との間に認められる客観的なつながりのこと。
・姻族(いんぞく)
自分の配偶者の血族、自分の血族の配偶者にあたる関係の者や、その関係自体をいう。
・請負(うけおい)
当事者の一方が仕事の完成を約束し、相手方が仕事の結果に対して報酬を支払うことを約束することによって成立する有償・双務・諾成契約。
・疑わしきは被告人の利益に(うたがわしきはひこくにんのりえきに)
刑事裁判において、法の解釈、適用、事実認定に争いが生じて、一義的に確定できない場合、被告に有利な解釈、適用および認定をしなければならないという原則。
・訴え(うったえ)
原告が裁判所に対して自己の請求を示し、その当否につき審理・判決を求める申立てをいう。
・訴えの提起(うったえのていき)
裁判所に民事上の紛争の審理を求め、民事訴訟手続を開始させる当事者の訴訟行為。
・訴えの取下げ(うったえのとりさげ)
原告の、訴えによる審理・判決の申立てをとりやめる旨の裁判所に対する意思表示をいう。
・訴えの変更(うったえのへんこう)
訴訟係属中に新しい請求の審判を原告が求めること。
・訴えの利益(うったえのりえき)
原告に訴訟要件として求められる、訴訟制度を利用する正当な利益のこと。
・親子会社(おやこがいしゃ)
親会社とは他会社の総株主の議決権の過半数を有する等その会社の経営を支配している会社等のことで、子会社は親会社に議決権の過半数を保有されている等その経営を支配されている会社のこと。
か行
・買戻し(かいもどし)
売買契約において、売主が一定期間内に売買代金と契約費用を返還すれば目的物を取り戻すことができるという解除権付特約(民法579条、580条)。
・覚せい剤取締法(かくせいざいとりしまりほう)
覚せい剤とその原料の取扱いを規制する法律。
・確認の訴え(かくにんのうったえ)
民事訴訟の訴えのうち、原告が被告に対し特定の地位や法律関係を有し、または有さないことを裁判所に確認してもらう訴えのこと。
・瑕疵(かし)
法律上何らかの欠点・欠陥を指す用語。
・貸金業法(かしきんぎょうほう)
いわゆるサラ金が社会問題化したため、資金需要者の利益を保護する目的で制定された、貸金業者を規制する法律。威圧的な取立て等に制裁を与える。
・瑕疵担保責任(かしたんぽせきにん)
売買やその他の有償契約の目的物が、通常持つ性質を欠いていて、しかも一般的な注意ではその欠陥を見つけることができない場合、その欠陥の発見から1年以内ならば買主は損害賠償請求や契約の解除をすることができる(民法570条、566条)。
・家事調停(かじちょうてい)
家事審判官と調停員で組織する調停委員会、または家事審判官のみによって行われる家事事件処理手続の一つ。
・過失(かしつ)
①私法上の過失は、自己の行為によって損害が発生することを予見できたのに、不注意でそれを予見せずこれを避ける行為を怠ったことをいう。
②刑法上は、故意がなくても、不注意によって被害を引き起こしてしまうことをいう。
・過失傷害の罪(かしつしょうがいのつみ)
傷害の過失犯形態を処罰するものである。
・家族法(かぞくほう)
民法第四編親族の規定を中心とした法体系のことである。
・割賦販売(かっぷはんばい)
売買代金を分割して定期的に支払うことを約束する売買契約をいう。クーリング・オフ制度や消費者と割賦販売会社・販売会社との間の抗弁権接続規定を設けることで取引の適正を図っている。
・株式会社(かぶしきがいしゃ)
株式を発行し、間接有限責任社員(会社法104条参照)のみで構成される会社。
・株式譲渡(かぶしきじょうと)
株式を他人に譲り渡す行為。
・株主(かぶぬし)
株式会社の実質的な所有者である株式会社の社員のこと。
・仮差押え(かりさしおさえ)
将来行われる金銭債権の強制執行を保全するために、暫定的に債務者がその財産を処分してしまうことを禁止する民事保全手続を仮差押えという。
・仮釈放(かりしゃくほう)
禁錮または懲役刑に処せられた者のうち改悛の状が認められる者については、刑期が一定期間経過した後に、仮に釈放する処分ができる(刑法28条)。仮釈放された者は、保護観察に付される。
・仮処分(かりしょぶん)
その現状の変更により、債権者が権利を実行することができなくなるおそれのあるときに、本案において権利の対象物となっている物の現状を維持する処分(民事保全法23条1項)をいう。争いがある権利関係について債権者に生ずる著しい損害または急迫の危険をさけるために、強制執行の保全とは無関係に、本案の権利関係について判決が確定するまで仮の状態を定める措置をする処分(23条2項)をいう。
・仮処分による事前差止め(かりしょぶんによるじぜんさしとめ)
裁判の確定を待っていたのでは裁判で争う目的が達成されない場合に、一定の行為や権利行使を禁止すること。
・仮登記(かりとうき)
将来の本登記に備えて、あらかじめ登記簿上の順位を保全する登記のこと(不動産登記法105条以下)。
・管轄(かんかつ)
ある事件についてどの裁判所がその訴訟を担当するかという分担。管轄は法律および当事者の合意により決定される。
・間接事実(かんせつじじつ)
主要事実の存在または不存在を推認させる事実。間接事実は主要事実の認定に用いられるという点で証拠と同じ働きをする。
・鑑定(かんてい)
①民事訴訟法上は、裁判官の判断能力を補充するために、学識・経験のある第三者にその専門知識や意見を報告させる手続のことである(民事訴訟法212条以下)。
②刑事訴訟法上は、特別な知識を有する者による、事実の法則またはその法則を具体的事実に適用して得た判断の報告をいう。
・期限の利益(きげんのりえき)
たとえば、ある債務を負っている者は、その期限が到来するまでの間はその債務の履行を請求されることはない。このように、期限がまだ到来していないことによって当事者が受ける利益のことをいう。
・危険負担(きけんふたん)
たとえば、建物の売買契約において、売主がその建物を引き渡す前に焼失してしまい、引き渡すことができなくなってしまったような場合に、買主は建物の代金を支払わなくてもよいのか、という問題。つまり、損害という危険を売主・買主のどちらが負担するのかというのが、危険負担の問題である。債務者主義と債権者主義がある。現行法の立場は、債務者主義(民法536条1項)で、例外的に、特定物に関する物権の設定または移転を目的とする双務契約については債権者主義(534条)としている。なお、実際には、危険負担の規定は任意規定のため、あらかじめ危険負担に関する特約を結び、民法の規定とは違う処理がなされていることが多い。
・擬制自白(ぎせいじはく)
当事者が、口頭弁論または準備手続で相手方の主張する事実について明らかに争わない場合、または口頭弁論に欠席した場合に、その相手方の主張する事実を自白したものとみなされること(民事訴訟法159条、170条5項)。自白同様、裁判所を拘束する。
・起訴状(きそじょう)
検察官が、公訴を提起するために裁判所に提出する書面。控訴を提起するには必ず起訴状を提出しなければならない(刑事訴訟法256条1項)。また、起訴状には、①被告人の氏名その他被告人を特定するに足りる事項、②公訴事実、③罪名を記載しなければならない(256条2項)。
・起訴猶予(きそゆうよ)
被疑者の嫌疑が十分であっても、被疑者の情状を考慮して起訴を行わない(刑事訴訟法248条)こと。
・求償権(きゅうしょうけん)
他人のために財産上の利益を与えた者が、その他人に対して自分の財産の減少分の返還を求める権利をいう。
・協議離縁(きょうぎりえん)
養子縁組の当事者が、協議によって縁組を解消すること。
・強制競売(きょうせいけいばい)
執行の対象を売却して金銭に換え、これを債権の満足に当てる手続のこと(民事執行法43条1項)。
・強制履行(きょうせいりこう)
債務者の意思にかかわらず、国家機関によって債権の本来の内容を実現すること。
・強制わいせつ罪(きょうせいわいせつざい)
13歳以上の男女に対しては、被害者の抵抗を著しく困難にする程度の「暴行または脅迫を用いてわいせつな行為をすること」。13歳未満の男女に対しては、手段を問わず「わいせつな行為をすること」。
・供託(きょうたく)
法令の規定にもとづいて金銭や物品等を供託所や一定の者に寄託することをいう。
・共同相続(きょうどうそうぞく)
2人以上の相続人が共同して相続する相続形態のことで、単独相続に対する用語である。
・共同抵当(きょうどうていとう)
同一の債権の担保として、数個の不動産の上に設定された抵当権のこと。
・共同保証(きょうどうほしょう)
数人の保証人が、同一の債務を保証する場合をいう。
・脅迫罪(きょうはくざい)
相手方またはその親族の生命・身体・自由・名誉・財産に害を加える旨を告知して人を脅迫する罪。
・共犯(きょうはん)
2人以上の行為者が共同して犯罪を実現する場合を意味する。
・業務上横領罪(ぎょうむじょうおうりょうざい)
業務上自己の占有する他人の物を、横領する罪である(刑法253条)。
・共有(きょうゆう)
複数の者が同一の物を同時に所有する場合の原則的な形式。
・寄与分(きよぶん)
共同相続人のうちに、被相続人の財産の維持または形式に寄与した寄与分を求めることができる者(寄与分権利者)がいる場合に、この寄与者の相続分に加算する財産額のことをいう(民法904条の2)。
・金銭債権(きんせんさいけん)
代金債権・貸金債権・賃金債権等、通常、一定額の金銭の支払いを目的とする金額債権のこと。
・クーリング・オフ(くーりんぐ・おふ)
訪問販売やキャッチセールス等で強引に勧められてよく考えないまま契約を結んでしまった場合、契約を結んだ者に再考の機会を与えて、消費者紛争を解決するために、一定の期間内ならば無条件に契約を解消できる制度。
・刑事施設(けいじしせつ)
懲役、禁錮、拘留の刑(国際受刑者移送法に定める共助刑を含む)の執行のため拘置される者、刑事訴訟法の規定により勾留される者、死刑の言渡しを受けて拘置される者を収容し、これらの者に対して必要な処遇を行う施設。
・刑事訴訟(けいじそしょう)
刑法の適用を受ける犯罪事件についてなされ、刑事訴訟法の手続にのっとって進められる訴訟。
・刑の執行猶予(けいのしっこうゆうよ)
言い渡した刑につき、実際の執行までの猶予期間を定め、その猶予期間を法で定められた遵守事項を破ることなく満了したときは判決の言渡しの効力が消滅する制度。
・軽犯罪法(けいはんざいほう)
刑法上の犯罪を構成するほどのものではないけれども、日常生活に有害で放任できない軽微な犯罪を取り締まるための法律。
・契約(けいやく)
相対する2人以上の当事者が合意することによって、権利・義務の関係を作り出す法律行為。
・契約の解除(けいやくのかいじょ)
契約が結ばれた後に、一方当事者の意思表示によって、その契約がはじめから存在しなかったと同様の状態にもどすこと。
・現行犯逮捕(げんこうはんたいほ)
現に犯罪を行っている者、行い終えた者、および①犯罪を行い終えてから間もないと明らかに認められ、かつ②犯人として連呼されている者・盗品等や犯罪に供した凶器その他の物を所持している者・身体や衣服に犯罪の顕著な証跡がある者・誰何(すいか)されて逃走しようとする者の、犯行現場およびその延長と見られる場所での逮捕。
・検察官(けんさつかん)
刑事事件の訴訟手続において、国を代理することを主たる任務とする公務員。
・検察審査会(けんさつしんさかい)
利害関係人の申立て、または職権で不起訴処分の当否を審査することによる、訴追権の適正化のため、一般国民からくじで選ばれた検察審査員で構成される合議体。
・現住建造物等放火罪(げんじゅうけんぞうぶつとうほうかざい)
現に人が日常的に利用している建造物等に対する放火および失火の罪。
・限定承認(げんていしょうにん)
被相続人の債務および遺贈を、相続によって得た財産の限度まで支払うことを条件とした、相続人の意思表示による相続。
・限定責任能力(げんていせきにんのうりょく)
刑法上、行為者に物事の善悪を区別する能力および区別した善悪に従って行動する能力が、まったくなかったとは言えないが、著しく衰えていて完全な責任能力を認めることができない場合。
・権利金(けんりきん)
土地・家屋の賃借権の設定や譲渡に際して、賃借人の側から地主・家主に対して支払われる金銭。敷金とは異なって、契約が終了しても返還されない。
・故意(こい)
どのような結果を招くか知っている上で、あえて行動し、結果を起こす意思。
・合意管轄(ごういかんかつ)
民事訴訟の当事者は合意によって、法定管轄とは異なる裁判所を選択することができる(民事訴訟法11条)。これを合意管轄という。
・行為能力(こういのうりょく)
行為能力とは、法律行為を単独で有効にすることができる法律上の地位あるいは資格をいう。
・抗告(こうこく)
決定・命令に対する上訴。一般抗告と特別抗告とがあり、一般抗告はさらに①通常抗告と②即時抗告に分けられる。
・更新料(こうしんりょう)
賃貸借契約の契約期間が満了し、さらに一定期間、同一の契約を続ける際に、賃借人から賃貸人へ支払われる金銭のことである。
・公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)
公証人役場においてまたは公証人の出張により、2人以上の証人の立会いのもと、遺言者が公証人に遺言を口授し、公証人が筆記して遺言者と証人に読み聞かせ、遺言者と証人が承認した後、各自署名押印した遺言書(民法969条等)。
・構成要件(こうせいようけん)
違法かつ有責な行為を類型化した、ある行為を犯罪行為とするために必要な条件。
・控訴(こうそ)
まだ確定していない第一審の判決に対して、上級裁判所の審理を求める不服申立て。
・勾留(こうりゅう)
逃亡または罪証隠滅を防止し、また将来の公判に備えて被疑者の身柄を確保するため、被疑者・被告人を拘束する裁判およびその執行のこと。
・勾留質問(こうりゅうしつもん)
逮捕した被疑者を引き続き勾留しようとする場合や、在宅で起訴された被告人を勾留しようとする場合に、裁判官が被疑者や被告人から被疑事実や被告事実についての弁明を聞いて、勾留理由があるかどうかを判断する手続。
・国選弁護(こくせんべんご)
当事者主義の実質化と法の下の平等のため、貧困などの事情によって弁護人を頼めない被告人等に、裁判所または裁判長が弁護人を選任する場合を指す。
・告訴(こくそ)
犯罪の被害者やその親族など、告訴権者が捜査機関に対して犯罪事実を申告し、犯人の訴追を求める意思表示。
・告発(こくはつ)
告訴権者と犯人自身以外の第三者が、捜査機関に対し、犯罪を申告して訴追を求めること(刑事訴訟法239条等)。
・国家賠償(こっかばいしょう)
違法な行政作用によって国民が損害を受けた場合、国家の道義的責任の観点からの補償のこと。
・婚姻予約(こんいんよやく)
婚姻予約とは、文字どおりには婚約を意味するが、わが判例法上は、主として内縁関係のことを意味し、準婚関係とも呼ばれる。
・婚約(こんやく)
将来婚姻しようという約束。身分法上の契約で、当事者に意思能力があれば有効に成立する。婚約の不当放棄に対しては、慰謝料などの損害賠償請求が認められる。
さ行
・債権(さいけん)
特定人が特定人に対して一定の財産上の行為(給付)を要求する権利。契約(特に売買契約)が主な発生原因だが、事務管理・不当利得・不法行為も原因となる。
・債権譲渡(さいけんじょうと)
債権の同一性を保ちつつ債権を移転する契約のこと。
・再婚禁止期間(さいこんきんしきかん)
女性が前婚の取消しまたは解消の日以後、再婚できない一定の期間のこと。日本の民法上は6か月とされている(733条1項)。
・財産分与請求権(ざいさんぶんよせいきゅうけん)
離婚した男女の一方が他方に対して財産の分与を求める権利(民法768条、771条)。財産分与の請求は、離婚後2年以内にしなければならない(768条2項)。
・再代襲(さいだいしゅう)
被相続者の子に死亡などの代襲原因が発生し、さらに、代襲相続人であるその子(被相続人の孫)についても代襲原因が発生した場合には、代襲相続人についても代襲が生じる(民法887条3項)。これを再代襲という。
・裁判員(さいばんいん)
国民の中から選任され、裁判官と共に一定の重大犯罪の刑事訴訟手続に関与する者(裁判員の参加する刑事裁判に関する法律<裁判員法>1条等参照)。選挙人名簿をもとに作られた裁判員候補者名簿の中から、事件ごとに裁判所における選任手続によって選ばれ、公判に出席し評議・評決を行う。
・裁判上の和解(さいばんじょうのわかい)
裁判所が関与する和解のこと。訴訟上の和解と起訴前の和解=即決和解がある。
・債務不履行(さいむふりこう)
一定の債務を負う者が、正当な理由がないのに本来の取り決めどおりの義務(債務)を行わないことをいう。
・債務名義(さいむめいぎ)
債務者・債権者間に私法上の給付請求権があるということを表示し、この請求権を強制執行によって実現できることを法律上認める公の文書のこと(民事執行法22条)。
・先取特権(さきどりとっけん)
社会政策的配慮・公平の見地から、法律の定める特殊な債権を持つものが債務者の総財産あるいは特定の動産・不動産から、優先弁済を受けることができるとする法定担保物権。
・差押え(さしおさえ)
確定判決その他の債務名義にもとづく金銭債権の強制執行の手続として、債務者の財産の事実上または法律上の処分を禁止し、債務者の財産を確保するために行われるものである(民法154条参照)。
・差押禁止財産(さしおさえきんしざいさん)
債務者に属している財産であっても、強制執行の目的物として差し押さえることを禁じられる財産のこと(民事執行法131・152条)。
・差止請求(さしとめせいきゅう)
自分にとって不利益となるおそれのある他人の行為をやめるように求めること。公害訴訟で損害賠償請求とともになされることが多い。
・三六協定(さぶろくきょうてい)
使用者が労働者に残業や休日出勤をさせるには、あらかじめ労使協定を行って、労働基準監督署に届け出なければならない。この協定について、労働基準法36条が定めていることから三六協定と呼ぶ。
・死因贈与(しいんぞうよ)
贈与者が死亡時に効力を発生させるものと定めて、生前にあらかじめ契約しておく贈与のこと(民法554条)。
・敷金(しききん)
不動産、特に家屋の賃借人が未払い賃料や損害金などの債務を担保するために、契約の成立に際してあらかじめ賃貸人に差し入れる金銭のこと(民法316条・619条)。賃貸借契約が終了すると、賃借人に未払い賃料や損害金の債務がない限り返還される。
・時効(じこう)
①私法上は、一定の事実状態が法定期間継続した場合に、その事実状態が真実の権利関係に合致するかどうか問わないで、権利の取得や消滅という法律効果を認める制度のこと。権利取得の効果を認めるのが取得時効、権利消滅の効果を認めるのが消滅時効である。②刑事法上は、一定の期間が経過した場合に国家の刑罰権を消滅させる制度のこと。
・時効期間(じこうきかん)
権利を行使することができる時、たとえば債権では弁済期が到来した時から起算し(民法166条)、一般の債権では10年(同法167条1項)、商事債権では5年(商法522条)の期間をいう。
・時効の援用(じこうのえんよう)
時効によって利益を受ける者が、時効の利益を受ける意思を表示すること。
・時効の中断(じこうのちゅうだん)
時効の基礎となる事実状態(たとえば所有者らしい状態、債務が存在しないような状態など)と相いれない一定の事実(たとえば所有者から占有者に対する訴えの提起、債権者の債務者に対する訴えの提起など)が生じた場合に、時効期間の進行を中断させること。中断があれば、すでに進行した時効期間はまったく効力を失い、中断事由の終わった時から新たに時効期間が進行を開始する(民法157条)。
・事後強盗罪(じごごうとうざい)
窃盗罪の犯人が、財物を得てこれを取り返されることを防ぎ、逮捕されることを免れ、または罪跡(ざいせき=犯罪の証拠となるもの)を隠滅するために、暴行・脅迫をはたらく罪。
・自己破産(じこはさん)
債務者自身の申立てによって開始される破産手続のこと。
・自首(じしゅ)
捜査機関に発覚する前に、犯人が自ら捜査機関に犯罪事実を告白すること。
・執行猶予(しっこうゆうよ)
刑の執行を一定期間猶予し、その期間内が無事に経過した場合には、刑を科さないこととする制度。
・失踪宣告(しっそうせんこく)
一定期間生死不明の状態が続いた場合には、その人をとりまく私法関係の限度で、その人が死亡したものとみなす制度(民法30条以下)。
・自動車損害賠償責任保険(じどうしゃそんがいばいしょうせきにんほけん)
自動車事故による人身損害について、立証責任や加害者の資力不足から被害者を保護するため、その賠償責任を負担する強制保険。これにより、挙証責任が転換され、他人の財物を毀損した場合の損害も塡補されない。また、被害者の保険者への直接請求権が認められている。
・事務管理(じむかんり)
法律上の義務がないのに、他人のために、本人の意思および利益に適合する、他人の事務を処理すること。①違法性の阻却②管理者の義務の発生③本人の義務の発生という法律効果を生じる。
・借地借家法(しゃくちしゃくやほう)
借地法、借家法、建物保護法を統合した法律。
・就業規則(しゅうぎょうきそく)
賃金その他の労働条件、職場の規律などについて、使用者が定める規則(労働基準法89条以下)。
・取得時効(しゅとくじこう)
権利者らしい状態が一定期間継続することによって、権利取得の効果が与えられる時効(民法162条以下)。
・受領遅滞(じゅりょうちたい)
債務者が本来の取り決めどおり義務を果たそうとしたにもかかわらず、債権者がそれに協力せず、あるいは協力できないために、債務の履行が遅れている状態にあること(民法413条)。
・準備書面(じゅんびしょめん)
民事訴訟で、口頭弁論を能率よく行い集中審理を実現するため、次の口頭弁論の期日に陳述する事項を記載して当事者が裁判所に提出し、並行して相手方当事者に直送する書面(民事訴訟法161条以下)。
・傷害罪(しょうがいざい)
人の生理的機能に障害を与える傷害行為を処罰し、人の身体の安全を保護するもの。
・上告(じょうこく)
民事訴訟においては、第二審の裁判所の確定していない終局判決に対して、不服を申し立てる上訴のこと。刑事訴訟においては、基本的には、控訴審の判決に対する不服申立てのこと。
・証拠保全(しょうこほぜん)
証拠調べ期日に証拠調べを行ったのではその証拠を使用することが困難であるような場合に、あらかじめ証拠調べを行ってその内容を確保しておくこと。
・使用者責任(しようしゃせきにん)
①使用関係があること②「事業の執行について」なされたものであること③被用者が一般の不法行為の要件を充たすこと④免責事由がないことを要件に、被用者が事業の執行につき第三者に加えた損害を賠償しなければならないという使用者の不法行為責任(民法715条)。
・使用貸借(しようたいしゃく)
友人に本を貸す場合のように、ある人(貸主)が相手方(借主)に無償で貸すことにして目的物を引き渡し、借主が使用・収益した後に返還する契約(民法593条以下)。
・譲渡担保(じょうとたんぽ)
抵当権を設定できない動産を引き渡さずに担保目的物にしたいという需要と、面倒な抵当権の設定、実行手続を回避するため、判例により認められている、法律形式上、者の所有権を移転させ、消費賃借上の債権を担保する制度。判例は形式を重視して、所有権は債権者に移転するとしている。
・証人尋問(しょうにんじんもん)
①民事訴訟上は、証人に対して口頭で質問し、証明すべき事実に関して証人が経験した事実を供述させ、その証言を証拠とする証拠調べ手続のこと。②刑事訴訟上は、第三者を証人として喚問し、証人が経験にもとづいて知り得た事実を供述させて、その証言を証拠とする手続のこと(刑事訴訟法143条以下)。
・少年法(しょうねんほう)
少年(20歳未満の者)は心身が未成熟で社会的経験が貧しいので、犯罪(非行)少年に対しては、その健全な育成を期待し、性格の矯正および環境の調整に関する保護処分をもってのぞむという基本理念にもとづいて、少年に適用される、刑法・刑事訴訟法の特別法。
・消費貸借(しょうひたいしゃく)
金銭の貸借のように、当事者の一方が金銭その他の物を相手方から借りて、後にこれと同種・同等・同量の物を返すことを約束すること(民法587条以下)。
・消滅時効(しょうめつじこう)
権利不行使の状態が一定期間継続することによってその権利が消滅するという効果を生じる時効(民法166条以下)。
・職務質問(しょくむしつもん)
警察官が、挙動不審で、①何らかの犯罪を犯し、もしくは犯そうとしていると疑うに足りる相当な理由のある者、または②すでに行われた犯罪について、もしくは犯罪が行われようとしていることについて知っていると合理的に認められる者に対し、犯罪の嫌疑の有無などを確認するために行う質問。
・処分禁止の仮処分(しょぶんきんしのかりしょぶん)
目的物の現状維持と、訴訟中、当事者を固定しておくため、債務者が目的物について、譲渡、担保権の設定などの処分行為を行うことを禁止する仮処分。
・所有権(しょゆうけん)
法令の制限内において、物を自由に使用・収益・処分できる権利(民法206条以下)。
・所有権留保(しょゆうけんりゅうほ)
代金が後払いの形をとる売買において、代金全部が完済されるまでの間、その目的物の所有権が売主に留保される制度。
・親等(しんとう)
親族間の遠近や親族関係の緊密さを計る単位・尺度のこと。
・心裡留保(しんりりゅうほ)
表示者の効果意思に対応した内心的意思が欠けており、同時に表意者がそのことを知っている場合を指す。
・請求異議の訴え(せいきゅういぎのうったえ)
債務名義が形成された後、執行開始までに実体法上は請求権が消滅している場合において、いまだ債務名義は有効であるゆえになされる執行に対して債務者が主張する訴え(民事執行法35条)。
・請求の原因(せいきゅうのげんいん)
請求の趣旨を補足して、請求を特定するのに必要な事実(民事訴訟法133条2項2号)。
・請求の趣旨(せいきゅうのしゅし)
原告が訴えによって求める判決の、主文の内容の簡潔かつ明確な表示(民事訴訟法133条2項2号)。
・製造物責任法(せいぞうぶつせきにんほう)
平成7年7月から施工された、消費者保護のための法律。製造業者の無過失責任を定めており、これは過失責任の原則を定めた一般不法行為の特則である。
・正当事由(せいとうじゆう)
更新がある借地契約・建物賃貸借契約の更新拒絶のために必要な条件。
・正当防衛(せいとうぼうえい)
急な不正の侵害に対して自分もしくは他人の権利を防衛するためにやむを得ずにした行為(刑法36条)。
・成年後見制度(せいねんこうけんせいど)
判断能力が不十分な成年者のための後見制度。①法定後見制度と②任意後見制度がある。
・占有移転禁止の仮処分(せんゆういてんきんしのかりしょぶん)
物の引渡し・明渡し請求権の保全のために、その物の現状を維持する必要から、目的物の占有の移転を禁止する仮処分。
・占有回収の訴え(せんゆうかいしゅうのうったえ)
占有の侵害が、妨害の程度を超え、侵奪の程度に達した場合に、占有の回収を目的として、占有の返還と損害賠償を請求するもの(民法200条1項)。
・占有保全の訴え(せんゆうほぜんのうったえ)
占有者が占有を妨害されるおそれがある場合に、占有の現状を保全するために、事前の妨害予防請求あるいは損害賠償の担保請求を行うもの(民法199条)。
・相殺(そうさい)
手続の簡易化や当事者間の公平のため、2者が互いに相手方に対して同種の債権を持っている場合に、その債権・債務を対等額において消滅させること(民法505条以下)。
・相続回復請求権(そうぞくかいふくせいきゅうけん)
真の相続人が表見相続人に対し相続権の確認を求めることに加え、相続財産の返還など相続権の侵害を排除してその回復を求める権利(民法884条)。
・相続放棄(そうぞくほうき)
相続開始後に相続人が相続の効果を拒否する意思表示のこと(民法938条以下)。相続財産が債務超過である場合、相続人が意思に反して過大な債務を負わせることを回避するための制度。
・訴額(そがく)
原告が、勝訴することにより得られると主張する利益を金銭で見積もった、訴訟物の目的の金額(民法訴訟法8条)。
・訴訟告知(そしょうこくち)
訴訟に法的な利害関係を有する第三者に手続関与の機会を保障し、被告知者に敗訴責任を分担させるため、訴訟係属中に、当事者が訴訟外の第三者に対して、当該訴訟が係属しているという事実を通知すること(民事訴訟法53条)。
・訴訟参加(そしょうさんか)
係属している訴訟について何らかの利害を有する者が、その訴訟に加入すること(民事訴訟法42条以下)。
・訴訟上の和解(そしょうじょうのわかい)
訴訟の係属中に、当事者双方が主張を譲り合って訴訟を終わらせる内容の、訴訟期日における合意(民事訴訟法124条)。
・訴訟代理人(そしょうだいりにん)
訴訟における自己の活動を積極的に拡大・充実させるため、当事者本人の意思によって選任される、訴訟上の代理人。
・損益相殺(そんえきそうさい)
損害の公平な負担を図るため、不法行為によって損害を被った者が、それと同一の原因により利益を受ける場合、損害賠償は、利益額を控除した金額に減額されること。
・損害賠償(そんがいばいしょう)
契約上の債務不履行や不法行為により一定の損害生じた場合に、それを塡補して、損害がなかったのと同じにすること。
・損害賠償額の予定(そんがいばいしょうがくのよてい)
①損害額の算定が困難な損害が発生したとき、その額の証明を回避するため、②損害の拡大が予想される場合のリスクを回避するため、当事者間であらかじめ損害賠償の金額を合意しておくこと。
た行
・代位弁済(だいいべんさい)
債務者以外の者が債務者のために弁済した場合に弁済者が債務者に対して取得する求償権、または、保証人・物上保証人が弁済・担保権の実行等によって債権者に満足を与えた場合の求償権を確保するために、本来弁済などによって消滅したはずの債権者の債権・担保権が求償権の範囲内で弁済者に移転するという代位を伴う弁済。
・対抗要件(たいこうようけん)
物権の変動を第三者に主張するために必要な要件。
・第三者に対する対抗要件(だいさんしゃにたいするたいこうようけん)
不動産物権変動の対抗要件は登記、動産物権変動の対抗要件は引渡し、指名債権譲渡の対抗要件は民法上の原則では確定日付をもってする通知または承諾である。
・第三者による弁済(だいさんしゃによるべんさい)
債務の弁済は原則として第三者もなすことができ(民法474条1項参照)、これにより、①弁済の効果、②弁済者の債務者に対する求償権が生じる。
・代襲相続(だいしゅうそうぞく)
相続人となる者(被代襲者)が相続していれば、その後相続によって財産を承継できたはずだという被代襲者の直系卑属(代襲者)の期待保護のため、被代襲者が相続開始時に死亡その他の理由によって相続権を失っているとき、被代襲者と同一順位で相続人となること(民法887条2項)。
・逮捕(たいほ)
強制捜査の一つ。捜査機関が被疑者の身柄を拘束するのが本質であるが、最長72時間と比較的短時間の拘束である点で勾留と区別され、その形態により、通常逮捕、現行犯逮捕、緊急逮捕の区別がある。
・建物買取請求権(たてものかいとりせいきゅうけん)
借地権の存続期間が満了した場合において、契約が更新されないときに、借地権者が借地権設定者に対して、借地上の建物などを時価で買い取るよう請求することができる権利。
・担保物権(たんぽぶっけん)
債権者が、債権の回収を確保する手段として、債務者または第三者に属する財産から優先的に弁済を受けるために、その財産に設定する権利。
・地役権(ちえきけん)
A地(要役地)の利用価値を増すためにB地(承役地)を利用する物権(民法280条~294条)。
・地上権(ちじょうけん)
他人の土地において工作物または竹木を所有するために、その土地を使用する物権(民法265条~269条の2)。
・嫡出子(ちゃくしゅつし)
法律上の婚姻関係にある夫婦から生まれた子のことをいう。
・嫡出否認の訴え(ちゃくしゅつひにんのうったえ)
嫡出子の推定を受ける子(民法772条)について、その推定をくつがえし、その子が自分の子ではないことを主張するために、母の夫(または夫であった者)が提起する訴えである。
・中間省略登記(ちゅうかんしょうりゃくとうき)
前々主、前主、現所有者と不動産の所有権が移転したにもかかわらず、前主をとばして前々主から現所有者に直接移転したかのようにみえる移転登記のことをいう。
・懲役(ちょうえき)
受刑者を刑事施設に拘置して、強制労働に服させる刑罰をいう(民法12条2項)。
・賃借権(ちんしゃくけん)
賃料を支払う対価として、目的物を使用・収益する権利をいう(民法601条)。
・賃貸借(ちんたいしゃく)
ある人(賃貸人)が相手方(賃借人)にある物を使用・収益させ、これに対して賃借人が賃料を支払う契約をいう(民法601条)。
・抵当権(ていとうけん)
債権者が、債務者または第三者(物上保証人)が債務の担保に供した目的物(不動産や一定の権利など)を、担保提供者の使用・収益に任せつつ、債務不履行の場合にその目的物の価額から優先弁済を受けることができるという担保物権である(民法369条以下)。
・手付(てつけ)
売買契約などの際に渡される金銭やその他の有価物、またはそれらを交付する契約のこと。
・手付流し・手付倍返し(てつけながし・てつけばいがえし)
買主が手付(解約手付)を売主に交付した場合、買主はその手付を放棄することで、また売主は手付の倍額を償還することで、売買契約を解除すること。前者を手付流し、後者を手付倍返しという。
・動機の錯誤(どうきのさくご)
内心的効果意思と表示との不一致はないが、効果意思を形成する過程で錯誤があること。動機の錯誤は原則として民法95条の「錯誤」には当たらないが、動機を表示して意思表示の内容とした場合には「錯誤」に当たり得るとするのが判例である。
・当事者(とうじしゃ)
自己の名において訴えを提起し、または相手方として訴えが提起され、判決の名宛人となる者のことである。
・特別養子(とくべつようし)
民法847条の2以下で規定された、幼子の養育を目的とする養子縁組を特別養子縁組といい、その養子を特別養子という。特別養子縁組は、家庭裁判所の審判によって成立する。特別養子縁組が成立すると養子と実父母等との親族関係は終了することから、原則として実父母の同意を要する。
・独立当事者参加(どくりつとうじしゃさんか)
第三者が訴訟の原告および被告の双方にそれぞれ自ら請求を持ち出し、原告の請求について同時かつ矛盾のない判決を求める場合をいう(民事訴訟法47条)。
な行
・内縁(ないえん)
婚姻する意思をもって、社会的には夫婦として認められた共同生活を送っているけれども、法定の婚姻の届出を行っていないために、法律上は夫婦とは認められない事実上の夫婦関係をいう。
・任意同行(にんいどうこう)
警察官が一定の者に警察署などへの同行を求めたときに、これに任意に応じる場合をいう。任意捜査の一種として認められると考えられている。
・認知(にんち)
非嫡出子につき、法律上の親子関係を認めることをいう。
・根抵当(ねていとう)
一定の範囲に属する不特定の債権を、極度額の限度で担保するために設定する抵当権をいう。
・根保証(ねほしょう)
一定の範囲内で発生時期や内容、金額が未確定の債務を保証すること。
は行
・廃除(はいじょ)
被相続人が、推定相続人の相続人としての資格を奪うことをいう。
・売買(ばいばい)
当事者の一方(売主)がある財産を相手方(買主)に移転し、これに対して買主がその代金を支払うことを互いに約束する契約をいう。
・破産(はさん)
債務者に経済的破たんの予兆がある場合に、債務者のすべての財産によって債権者に公平な満足を与えるための、裁判上の手続をいう。破産者が法人である場合にはその法人は消滅し、個人であれば免責の決定を受ければゼロから再出発できること、といった特徴がある。
・破産管財人(はさんかんざいにん)
破産手続開始の決定と同時に破産裁判所によって選任され、破産財産を管理し、破産財団を換価して売上金を破産債権者に配当する者。
・判決の確定(はんけつのかくてい)
判決が上訴で取り消される可能性がなくなった状態。
・反訴(はんそ)
係属中の訴訟の手続内で、被告から、本訴請求またはそれに対する防御方法と関連する請求について、原告に対して提起する訴えをいう。
・被疑者・被告人(ひぎしゃ・ひこくにん)
被疑者とは、犯罪の嫌疑を受けて捜査の対象となっているが、まだ公訴の提起は受けていない者をいう。被告人とは、公訴の提起を受けた者をいう。
・非債弁済(ひさいべんさい)
債務がないことを知りながら弁済する場合をいう。この場合、本来ならば給付された物は不当利得に当たるはずであるが、自分からあえて損失を招いた者は法で保護する必要はないから、非債弁済をした場合には返還請求はできないことになっている。
・非嫡出子(ひちゃくしゅつし)
法律上の婚姻関係にない男女の間に生まれた子をいう。
・被保佐人(ひほさにん)
精神上の障害によって、自分の行為についての判断能力が著しく不十分な状況にあるために、本人や配偶者、検察官等の請求によって、家庭裁判所から補佐開始の審判を受けた者をいう。
・被補助人(ひほじょにん)
精神上の障害によって、自分の行為についての判断能力が不十分な状況にあるために 、本人や配偶者、検察官等の請求によって、家庭裁判所から補助開始の審判を受けた者をいう。
・表見代理(ひょうけんだいり)
無権代理とされる場合において、一定の要件のもとで本人に対してその無権代理行為の効力を生じさせることで、無権代理人を本当の代理人と信じて取引をした相手方を保護する制度。
・不起訴処分(ふきそしょぶん)
検察官が、事件の軽重や犯人の行動、情状などから起訴しないものと決定することをいう。
・不貞な行為(ふていなこうい)
配偶者としての貞操義務に反する行為をいう。民法では、離婚原因の一つとされている。
・不当利得(ふとうりとく)
法律上正当な理由がないにもかかわらず、他人の財産や労務から利益を受け、そのために他人に損失を与えることをいう。
・不法原因給付(ふほうげんいんきゅうふ)
不法の原因のために給付を行った者が、その給付した物の返還を請求することができないという法律関係をいう。
・不法行為(ふほうこうい)
自己の不注意などによって他人の身体、財産に損害を加えてしまうことをいう。このような場合、損害を被った相手方を救済し、損害を公平に分担させる必要がある。
・フランチャイズ契約(ふらんちゃんいずけいやく)
商品の製造会社または主宰会社が、加盟店に対して地域的一定販売権を与える契約のことである。コンビニエンスストアや外食産業などで用いられている。
・文書提出命令(ぶんしょていしゅつめいれい)
裁判所が、証拠とすべき書面をその所持人に提出するよう発する命令をいう。
・弁済(べんさい)
債務者が、債務の内容通りの給付をして、債権者を満足させることをいう。
・弁済者の代位(べんさいしゃのだいい)
債務者以外の第三者が弁済した場合、弁済者は、求償権の範囲で原債権と担保を行使できる。これを弁済者の代位という。
・暴行罪(ぼうこうざい)
暴行行為を処罰するもの。傷害の結果は生じていないことが必要である。
・法定相続(ほうていそうぞく)
相続分の指定がないときに、民法の規定(民法900条、901条)にもとづいて相続分が決まることをいう。
・保護観察(ほごかんさつ)
犯罪者に対して、その改善・更生を助けるために、適切な指導監督者の下で、一定の制限(一定の住居に居住し正業に従事することや、住居を転じまたは長期の旅行をするときは保護観察者の許可を得ることなど)に服するほかは、自由な社会生活を送らせることをいう。少年に対する保護処分の一種としての保護観察や、仮釈放者・刑の執行猶予を受けた者に対する保護観察などがある。
・保護処分(ほごしょぶん)
家庭裁判所が、審判の結果、少年に対して言い渡す処分をいう。
・保釈(ほしゃく)
保釈保証金の納付を条件に、被告人に対する勾留の執行を停止してその身柄拘束を解くことを決定する裁判をおよびその執行をいう。
・保証契約(ほしょうけいやく)
主たる債務者が履行しないときには、保証人が主たる債務者と同一の債務の履行をしなければならないとする契約をいう。
・保証債務(ほしょうさいむ)
他人がその債務を履行しない場合に、代わりに履行することを約した人の債務をいう。
ま行
・身元保証(みもとほしょう)
①被用者に帰責事由がある場合の債務不履行・不法行為につき、使用者が受けた損害の賠償を保証する趣旨であるものと、②被用者の帰責事由の有無を問わず、被用者の行為により使用者が受けた損害の賠償を保証する趣旨のものとがある。
・民事保全(みんじほぜん)
仮差押え、仮処分の総称をいう。
・無権代理(むけんだいり)
代理権を与えられていない者が、代理行為をすることをいう。本人には効果帰属しないのが原則である。
・無権代理人(むけんだいりにん)
代理権をもたないにもかかわらず代理行為をした者をいう。
・無罪判決(むざいはんけつ)
被告人の行為が罪とならない場合や、犯罪が被告人の行為によるものとの証明がなかった場合になされる実体裁判をいう。
・免責的債務引受(めんせきてきさいむひきうけ)
債務が同一性を失わずに引受人に移転し、旧債務者が債務を免れる場合をいう。
・黙秘権(もくひけん)
憲法38条1項は、「何人も、自己に不利益な供述を強要されない」として、いわゆる黙秘権を保障している。
や行
・有益費(ゆうえきひ)
占有物の改良のために費やした費用(民法196条2項)。たとえば、和式のトイレを洋式にする費用などである。
・余罪(よざい)
逮捕・勾留された犯罪や公訴が提起された犯罪以外に、被疑者や被告人が犯したと疑われる犯罪をいう。
ら行
・履行遅滞(りこうちたい)
履行期が過ぎているにもかかわらず、債務を履行しないことをいう。①履行が可能であること②履行期が経過したこと(民法412条)③履行しないことが違法であること④債務者に帰責性があること、が要件になる。
・履行遅滞による解除(りこうちたいによるかいじょ)
債務者が履行を遅滞した場合、相手方は、①債務者に帰責性があること②相当の期間を定めた催告をしたこと③相当期間内に履行がないこと、が満たされれば、契約を解除することができる。
・履行不能(りこうふのう)
債権成立後、債務者の帰責性により、後発的に債務の履行が不可能になることである。
・履行不能による解除(りこうふのうによるかいじょ)
履行の全部または一部が債務者の帰責性により後発的に不能になった場合には、債権者は契約の解除をすることができる。
・離婚(りこん)
夫婦の双方が生存中に、その婚姻を解消すること。現在、①夫婦の合意による協議離婚(民法763条)②調停委員の調停による調停離婚(家事審判法17条等)③離婚の調停が調わないときに家庭裁判所が職権で離婚の審判をする審判離婚(家事審判法24条)④民法770条所定の原因がある場合に、訴えにもとづく裁判によって成立する裁判離婚の4種類が認められている。
・利息制限法(りそくせいげんほう)
金銭の支払いを内容とする消費貸借の利息について、一定率以上の取りたてを禁じる法律である。過重な利息から債権者を保護することを目的とする。
・略式裁判(りゃくしきさいばん)
被告人が認めている軽微事件について、通常の公判手続を省略して、簡易裁判所の命令(略式命令)で財産刑(一定額以下の罰金・科料)を科す手続をいう(刑事訴訟法461条以下)。
・留置権(りゅうちけん)
他人の物の占有者が、その他人の物について生じた債権の弁済を受けるまで、その物を留め置く権利のことである(民法295条)。
・両罰規定(りょうばつきてい)
法人の代表者が犯罪行為を行った場合に、その代表者個人を罰するとともに法人にも罰金刑を科す規定をいう。
・連帯債務(れんたいさいむ)
数人の債務者が、同一内容の可分給付について、それぞれ独立に全部の給付債務を負い、そのうちの1人が弁済をすれば、他の債務者は、債務を免れるというような債務をいう。
・連帯保証(れんたいほしょう)
保証人が主たる債務者と連帯して保証債務を負担する場合をいう。
・労働協約(ろうどうきょうやく)
労働条件について、使用者と労働組合その他の労働者団体との間で交わされた、書面による合意をいう(労働組合法14条)。
わ行
・和解(わかい)
争っている当事者が、相互に譲歩してその間に存在する争いをやめることを約束する契約をいう(民法695条)。
交通事故の加害者が保険に入っていませんでした。被害者の私はどうすればいいですか?
【事例】
交通事故に遭ったのですが、加害者は、任意保険どころか自賠責保険にすら入っていませんでした。お金もないようなのですが、何かいい方法はありますか?
【答え】
加害者が任意保険に入っておらず、自賠責保険の上限を超える場合には、加害者の自己負担となりますが、このような場合であれば加害者に支払能力がないこともよくあるでしょう。自分の任意保険に「無保険車傷害条項」「人身傷害条項」などの条項があった場合、自分が加入している保険で損害の給付を受けることができる可能性があります。
まずは自分の保険会社に問い合わせてみてください。
加害者が自賠責保険にすら入っていなかった場合、当然のことですが、自賠責保険から損害賠償の支払いを受けることはできません。直接請求しようにも、資力がなくそれがかなわないことも多いでしょう。
このような場合、政府保障事業というものがあります。加害者が自賠責保険に入っていない場合やひき逃げにあって加害者不明である場合などの被害者救済のために、自賠責保険と同額まで支払いを補償してもらうというものです。
今回のケースでは、政府保障事業を利用して、十分でない場合は加害者に直接請求することになるでしょう。ただし、資力がないため、裁判に勝ったとしても回収ができない可能性もあります。
保険会社から治療費を打ち切ると言われたら、どうすればいいですか?
【事例】半年ほど前に交通事故に遭い、むちうち症と診断されました。それ以降、病院に通って治療しているのですが、加害者側の保険会社から治療費の支払いを打ち切る旨通告されました。まだ首が痛いので治療を続けたいのですが、どうすればいいのでしょうか?
【答え】
一般的には、むちうち症の治療期間は3カ月から半年とされています。その期間を超えた場合、保険会社から治療費の支払いを打ち切ると言われることがあります。これ以上治療を続けても改善を期待できないのであれば、医師に後遺障害診断書を書いてもらうことになります。
医師に後遺障害診断書を書いてもらった場合、それ以降の治療費の支払はなされません。そこで、保険会社から後遺障害診断書を書いてもらって下さいと言われたら、医師に自分の状態を伝え、医師が改善の見込みがあるというのであれば、そのまま治療を続けることがいいでしょう。これ以上の改善は期待できないと言われれば、後遺障害診断書を作成してもらうしかないでしょう。
治療費の打ち切り後も治療を続ける場合、その支払は自己負担になります(健康保険を使用できないと言われることがありますが、健康保険を使用することができます)。この場合、後に交渉や裁判で正当な治療と認められれば治療費の支払いを受け取ることができます。
通常,保険会社が打ち切りの有無を決める場合,医師に医療照会をかけます。そこで,保険会社が医療照会をする前に治療の必要性について医師とよく協議することが重要です。また,いったん打ち切られた治療は通常は復活しないので,打ち切られる前に弁護士に相談し,場合によっては保険会社と交渉してもらうことが肝要です。
自賠責保険と任意保険の違いについて教えてください。
【事例】自動車保険には自賠責保険と任意保険があると聞きましたが、補償範囲や請求の仕方などで違いがあるのでしょうか?
【答え】
任意保険は、あくまでも加入するかどうかは自由ですが、自賠責保険は、自動車損害賠償補償法(自賠法)によって契約の締結が義務付けられています。
任意保険には、物損事故も含まれ、また、広く自動車の所有、使用又は管理に起因する人身事故による損害を補償しますが、自賠責保険によって補償されるのは「運行によって」生じた他人の生命または身体に対する事故のみです。
したがって、人身事故の場合は自賠責保険の支払はなされません。
自賠法16条は、被害者から保険会社に対し損害賠償額の支払を直接請求することができると定められています。
任意保険においても被害者の直接請求は認められますが、保険会社の了解のもとで当事者間において損害賠償額について書面による合意が成立するなど一定の要件を満たした場合にのみ認められます。
現在の政令に基づく自賠責保険額は、死亡による損害に対し3000万円を、傷害による損害に対し120万円を上限とし、後遺障害に対しては75万円から3000万円の別途支払いがなされます。
それに対し、任意保険においては、契約によって各損害に対する支払限度額が決まってきます。
被害者に過失があった場合、その過失の割合に応じて賠償金の減額がなされます。任意保険では、この過失相殺が厳格に適用されることになります。
それに対し、自賠責保険では、被害者に重大な過失がある場合にのみ過失相殺による減額が行われます。7割未満の過失では減額はなく、それ以上の過失でも5割までしか過失相殺は行われません。
交通事故における被害者の過失について教えてください。
【事例】私は、横断歩道があったのにそれを利用することなく、近くを走って渡ったのですが、その際に自動車に跳ね飛ばされて大けがをしてしまいました。損賠請求の交渉中なのですが、私に過失があるから払う必要がないと言われてしまいました。その通りなのでしょうか?
【答え】
相手に損害賠償の義務があることは間違いありませんが、被害者側にも過失があれば賠償額は減額されます(民法722条2項、過失相殺)。
どの程度減額されるかは一律には言えませんが、裁判所で認められた過失割合を類型化し、基本的な割合が定められている書籍も存在します。通常のケースであれば、それを基に話し合いをすることになるでしょう。
今回のケースに関して言えば、横断歩道から20メートル以内のところであれば、概ね、被害者の過失割合は40パーセント程度になるでしょう。もっとも、それが夜であるか昼であるか、幹線道路であるか否か、住宅地であるか否かなど、様々な要素によって修正がかけられることになります。
加害者と交渉する場合は、過失割合の基本割合を念頭に交渉し、不当な要求に応じない心構えでいる必要があります。
ある集まりで、主催者の発言により私の名誉が棄損されました。どのような請求ができますか?
【事例】私はある集会に参加していたのですが、主催者がその場に参加していた全員の目の前で、私に関する事実無根の発言がなされました。この発言により、私は名誉をひどく傷つけられたのですが、主催者に責任追及は出来ますでしょうか?
【答え】
名誉棄損とは、法的には客観的な社会的名誉を侵害する行為と評価されており、名誉感情を侵害されたにとどまる場合は名誉棄損とはみなされません。また、社会的名誉が棄損されたと評価されるためには、特定の個人に対してのみ情報伝達がされたことのみでは足りず、不特定多数に伝えた場合でなければなりません。もっとも、特定の個人に対してなされた発言でも、伝播可能性があると認められれば成立の余地があります。
いかなる場合に伝播可能性があるかは明確ではありませんが、単に人数のみで決まるわけでなく、組織内での情報伝達が行われるかで決まることが多いです。
名誉棄損があった場合、責任追及方法としては、損害賠償・名誉回復請求・差止請求の3つが考えられます。
もっとも、あらゆるケースで3つともが追求できるわけではありませんので、詳しくは弁護士にご相談ください。
不動産売買で払った「手付金」の法的な意味は何でしょうか?
【事例】マイホームを購入しようとして、契約し、手付金まで払ったのですが、急な事情により購入をやめることにしました。手付金を諦めれば解除できるのでしょうか。
【答え】不動産を購入する際は手付金を払うことが一般です。手付金と一口に言っても、法的には様々な種類がありますが、契約書上記載がなければ、「解約手付」とみなされます。
解約手付とは、この手付が交付されていれば、買主は手付金を放棄することによって契約を解除でき、売主も手付金の2倍を買主に支払うことで契約を解除できるというものです。
また、不動産取引において宅地建物取引業者が自ら売主になっている場合に手付金のやり取りがなされた場合は、その手付がいかなる趣旨でなされたものであろうとも解約手付としての性質を有するとされます(宅地建物取引業法39条)。
ただし、民法には手付金を放棄することで契約解除ができるのは、「当事者の一方が履行に着手するまで」に限定される旨の規定があります。今回のケースでは、売主が各種の登記申請書類の用意をした場合などはもはや手付解除はできないことになるでしょう。
犯罪に巻き込まれ、被害を受けました。被害者の立場でどのようなことができますか?
【事例】道を歩いていたら、数人に囲まれて暴力を受け、財布を奪われてしまいました。犯人が捕まったのですが、財布は戻ってきません。どうすればいいのでしょうか。
【答え】
日本の裁判手続きは、検察官が起訴し、被告人(犯人)が防御するというシステムを取っており、原則として被害者は当事者ではありません。裁判前の手続きとして、警察官や検察官の取り調べを受けたり、実況検分に立ち会ったりすることが主な役割です。また、犯人が犯行を否認する場合は、証人として裁判所で証言することを求められることもあります。
平成21年から、被害者意見陳述という制度が導入されました。検察官に申告することで、現在の心情や意見を裁判の中で陳述することができると言う制度です。事実関係の主張はできませんが、裁判官に被害者としてどのように思っているかを理解してもらう場となります。
また、一定の重い犯罪(殺人や強姦など)に限られますが、被害者や被害者の委託を受けた弁護士が刑事裁判に参加することができる被害者参加制度も導入されました。この制度を利用すれば、被害者が商人や被告人に直接尋問をすることができます。弁護士を依頼する資力がない場合は、法テラスの援助を受けることも可能です。
被告人側から(実際には被告人についている弁護士から)、示談のために被害弁償の提供があることもあります。事件によっては、民事訴訟を起こすことは経済的に割に合わないケースも多いため、被害回復のために受け取ることも検討してもいいでしょう。ただし、被害弁償を受けたり示談をしたりすれば、判決にあたって被告人に有利に働きますので注意が必要です。
被告人から被害弁償がない場合は、民事訴訟を提起する、損害賠償の申立てをする(一定の犯罪に限られます)、犯罪被害者給付制度を利用する(一定の犯罪に限られます)などの方法がありますが、どれも一長一短です。
犯罪被害に遭った場合、どのような方法がとれるかはケースごとに大きく異なりますので、弁護士に相談することが適切でしょう。
患者またはその遺族が、医師に対して損害賠償責任を問えるのは、どのような場合ですか?
【事例】私の夫は、毎年精密検査を受けていたのですが、特に異常はないと言われ続けていました。ところが、突然手遅れのがんを宣告され、半年後に死亡しました。この医師や病院に対して責任を問うことはできるでしょうか。
【答え】医療事故は、ケースごとに事案が大きく異なり、医師や病院に賠償責任を問えるか簡単には判断できないことも少なくありません。
法的構成としては、医者に対しては、診療契約上の債務不履行責任(民法415条)や不法行為責任(民法709条)を根拠に請求し、病院に対しては使用者責任(民法715条)や履行補助者の責任(民法415条)を根拠に請求することになるでしょう。
なお、損害賠償請求権の行使は期間制限がありますので(債務不履行は10年、不法行為は3年)ご注意ください。
まず、損害賠償責任を認めさせるためには、医師の注意義務違反を認定することが必要です。医師は、診療当時のいわゆる臨床医学の実践の場における医療水準を基準として、危険防止のため必要とされる最善の注意義務を負うことになります。逆にいえば、高度先進医療等で医療水準に達していない医療行為については、医師は、これを実施すべき義務が無いことになります。どのような場合に医療水準と言えるかは裁判においても判断が難しく(全国一律のものではなく、個々の医療機関の規模や性格などによって個別的に判断されます)、医療過誤訴訟が困難な理由の一つといえるでしょう。
さらに、これ以外にも、義務違反が無かったならば結果発生を回避できたかという因果関係の存在も問題になります。因果関係が無ければ、仮に医師の注意義務違反を肯定できたとしても責任追及できないことになります。
医療過誤については、専門的な知識も必要とされるので、早めに弁護士に相談することが有用でしょう。
ヤミ金と思われる高利貸しからお金を借り、小切手を取られてしまいました・・・
【事例】私の経営している会社の経営がうまくいかず、DMに応じてしまって、小切手を担保に300万円を10日で3割の利息で借りてしまいました。どうすればいいですか?小切手を取り戻す方法はありますか。
【答え】これは、典型的な「システム金融」と呼ばれるもので、いわゆるヤミ金です。より詳しく述べますと、中小企業に対してFAXやDMで貸付勧誘を行い(このFAXやDMは大抵小奇麗なもので、金利も安く書かれています)、債務者振出に係る手形や小切手を決済手段とする貸金業者をいいます。無論、違法金利であり、犯罪行為です。
手形や小切手を担保に取ることで、債務者は、違法な高金利であることを分かっていても不渡りや銀行取引停止処分を避けようとして支払不能に陥るまで返済を強いられるようになります。
一度システム金融から融資を受けると、いわゆる「カモ」としてヤミ金の顧客名簿に掲載されてしまい、他のシステム金融からも勧誘を受け、借金が雪だるま式に増えていくことが厄介な点です。
こうしたヤミ金に対しては、一切返済する必要がありません。借りたお金を返す必要もなく、既に返済したお金を返すよう請求することもできます(もっとも、ヤミ金は証拠を残さないように営業しており、事実上お金を取り戻すのは困難なケースが多いでしょう)。
手形や小切手が担保に取られているのであれば、まず、その不渡りを回避する必要があります。弁護士が介入し、取立禁止の仮処分当の申し立てなどの手段を取らなければならないでしょう。
ヤミ金からは、絶対にお金を借りないでください。犯罪です。
債務整理をしたいのですが、住宅は手放したくありません。何か方法はありますか?
【事例】私の勤めている会社の業績が落ちてきて、給料も下がってしまいました。給料が下がる前に住宅ローンを組んで家を買いましたが、支払ができない状態です。どうしたら家を手放さずにすみますか?
【答え】住宅ローンを組む際は、担保のため、住宅に抵当権が設定されるのが通常です。すなわち、今の状態が進めば、家は競売にかけられ、手放さざるを得なくなるでしょう。これを防ぐためには、民事再生法の中の「住宅資金貸付債権に関する督促」(住宅ローン督促)を活用する方法があります。
これは、民事再生手続において、再生債務者に抱える住宅ローンのうち、一定の要件を満たすものを、「住宅資金貸付債権」として、融資時に定められた返済計画を修正して、債務者が住宅ローンの返済を継続することを可能にする制度です。もっとも、住宅ローンの減額までは通常はできませんので注意してください。
住宅ローン督促を用いた個人再生は、通常の債務整理以上に難しい問題です。保証会社も絡んでくるため、迅速に動かなければ目的を達成することができなくなります(保証会社が代位弁済してから6カ月たってしまった場合、住宅を守ることは事実上不可能になるでしょう)。
こういった悩みを抱えている方は、普通の債務整理以上に、早急に弁護士に相談してください。