職場から残業代が出ません。どうすれば払ってもらえますか?
【事例】私は、職場で毎日遅くまで仕事をしていますが、給与明細を見ても残業代が出ている様子はありません。上司に言っても、「サービス残業だ」などと言われて取り合ってもらえません。このままただ働きをするのは許せません。
【答え】「残業」と一言で行っても、法的には2種類のものがあります。一つが、労働基準法で定められている法定労働時間(1日8時間以内、1週40時間以内)を超えた残業である法定残業であり、もう一つが法定労働時間の範囲内で会社が規則で定めている所定労働時間を超えた残業である法内残業です。
法内残業は、労働基準法の範囲内であるため、法律の規制はありません。この場合、労働契約や就業規則に反する賃金しか出ていないのであれば会社側に残業代請求できますが、逆にいえば、労働契約や就業規則の範囲内であれば残業代の請求はできないことになります。
法定残業については、通常の賃金に25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。仮に、労働契約でこれと反する内容が設けられていても、強制的なものです。残業代込という名目の賃金であったとしても、残業何時間分と言う定め方をされていなければ無効です。年棒制であっても残業代は発生します。
なお、「管理監督者」であれば残業代の規定の適用はないとされていますが、単なる店長というだけではこれに該当しません。この規定がいいように使われていることもありますので、注意してください。
請求方法としては、裁判や審判等様々なものがあります。また、裁判所の手続きを経ずに請求するのが妥当なケースもあります。事案ごとに、より適切な方法を検討してください。
違法建築の建物のせいで庭の日当たりが悪くなりそうです・・・
【事例】私の家の近くに、近々、3階建てのマンションが新築されることになりました。完成すれば、私の庭はほとんど日が当らなくなります。調べてみると、この工事は建築確認がされていない違法建築のようです。阻止することはできますか?
【答え】都市計画区内で建築をするためには、都道府県または市町村建築主事から建築確認を受ける必要があります。しかし、この確認を受けない無許可の建築も存在し、このような建築物は高さ制限やなどの規制を守っていないこともあります。
このような建築物に対しては、行政が工事の停止や除去を命ずることもできますが、この権限が適切に行使されているとは言えないのが現状です。
このようなケースで、なんとしても建築を阻止するためには、行政に期待するよりも、裁判所を用いるべきでしょう。当該建物が、その周辺の環境にそぐわないとか、我慢が出来ないほどの被害を与える場合、仮処分という手段で建築を阻止することもできます。
もっとも、この仮処分も必ず認められるわけではなく、行政法規に違反したのみならず、申立人が実質的な被害を受けることを立証しなければなりません。
裁判所の手続きを利用する場合、早急にする必要があります。建物が完成してしまっては損害賠償しか認められず、結局建築自体を阻止できない可能性が高いでしょう。違法建築のおそれを感じたら、すぐに弁護士に相談してください。
クーリング・オフという制度を聞いたことがありますが、その内容について教えてください。
【事例】先日、突然家にセールスマンが押し掛けてきて、長時間居座り、商品を買わされてしまいました。商品はいらないのでお金を返してほしいのですが、取り合ってくれません。どうすればいいのでしょうか。クーリング・オフをすれば解決するのでしょうか。
【答え】「クーリング・オフ」(クーリングオフ)とは、契約した後、頭を冷やして(Cooling Off)冷静に考え直す時間を消費者に与え、一定期間内であれば無条件で契約を解除することができる特別な制度のことをいいます。また、契約の際に個別クレジット契約を利用した時はそれについても割賦販売法に基づいてクーリングオフすることもできます。一度契約が成立するとその契約に拘束され、お互いに契約を守るのが契約の原則ですが、この原則に例外を設けたのが「クーリング・オフ」制度です。
クーリング・オフ制度は、いくつかの法律によって定められていますが、これから、特定商取引法のクーリング・オフ制度を例に挙げて説明します。
クーリング・オフは、訪問販売、電話勧誘販売、連鎖販売取引(いわゆるマルチ商法)、特定継続的役務提供(エステや外国語学校、結婚相手紹介サービスなど)、業務提供誘引販売取引(内職商法、モニター商法など)などについて認められており、それぞれの類型ごとに行使期間が異なります。原則として営業所以外で行われた取引であることが要件になりますが、キャッチセールスやアポイントメントセールスについてはクーリング・オフの適用があります。
クーリング・オフをするためには、書面で意思表示を行う必要があります(口頭でもできるとする裁判例もありますが、書面でしたほうが無難です)。その行使は、業者から契約内容を明らかにした法定書面を受領した日から起算して8日以内(連鎖販売取引、業務提供誘引販売取引については20日以内)に行う必要があります。
クーリング・オフは、書面を発した時に効力を発し、当事者は原状回復義務(契約締結以前の状態に戻す義務)を負うことになります。
ペットに自分の財産を相続させたいのですが、可能でしょうか?
【事例】私は身寄りもなく、一緒に暮らしているのはペットの猫だけです。万一、私に何かあった時のために、猫に財産を相続させたいのですが、どのようにすればいいのでしょうか。
【答え】
端的にお答えすると、ペットは法律上「モノ」として扱われており、権利義務の主体となることは認められていません。ペットが契約の当事者になったり、債権を行使したり、不動産を所有することは現行法上認められていません。
それゆえ、ご質問のような、猫に財産を相続させることは不可能です。
もし、ペットの面倒をみる人が誰もいなくなることをおそれているのであれば、信頼のできる人と負担付死因贈与契約を締結することを検討してもいいでしょう。「死因贈与」とは、贈与者が死亡することによって効力が発生する特殊な契約です。「負担付」とは、読んで字のごとく、贈与はするけど一定の負担もしてほしいという意味です。信頼のできる人と、「自分が死んだあとにペットの世話をすることを条件に財産を贈与する」という契約を締結することで、ペットの面倒を見てもらえることになります。
ほぼ同様の効果をもたらすものとして、負担付遺贈という制度もあります。これは、信頼のできる人に、ペットの面倒を見てくれることを条件に財産を譲渡するという制度です。ただし、遺贈は、財産をもらう人がいつでも放棄できる制度なので、誰に任せるかを慎重に選ぶといいでしょう。
相続で受け取る財産より借金のほうが大きい場合
【事例】私の親が亡くなり、私が相続をすることになりました。親は家や土地を所有していたのですが、同時に、家や土地を売っても払えないほどの多額の借金をしていました。債権者から払うように言われているのですが、支払わなければならないのでしょうか。
【答え】
死亡により相続が開始すると、預貯金といった積極財産だけでなく、借金などの消極財産も受け継ぐことになります。積極財産が消極財産を上回るのであれば問題ないのですが、消極財産の方が積極財産を上回ることも決して珍しくなくその場合、相続をしたばかりに新たな負担を抱え込んでしまうことになります。
しかし、相続人に被相続人の借金を返済する気が無いのであれば相続放棄をすることができ、さらに、積極財産として受け継いだ財産の範囲内に限って借金返済に応じる限定承認をすることもできます。
相続放棄をするには、家裁に相続放棄の申立てをする必要があります。これにより、申し立てをした人は初めから相続人ではなかったものとみなされます。
積極財産と消極財産のどちらが多いか不明であるときは限定承認をすることも検討するといいでしょう。もっとも、相続人が複数いるときは全員の同意が無いと限定承認をすることができないという問題もあります。限定承認が認められれば、積極財産の価額が多ければ借金を支払った後の残りが手元に残ることになり、借金が多かった時は積極財産以上の返済を拒否できることになります。
相続放棄も限定承認も、自分が相続人になったことを知った時から3か月以内に相続放棄や限定承認をしなかった場合は単純承認(相続財産をそのまま相続する意思表示をすること)をしたものとみなされますのでご注意ください。
相続には税務問題も絡み複雑な手続きが求められるので、専門家に相談するといいでしょう。
弁護人の選任手続きについてお聞かせください
【事例】逮捕された場合、どのように弁護人を付ければよいのでしょうか。国選とか当番とかいう言葉を聞いたことがありますが、何のことでしょうか。
【答え】弁護人選任権は憲法34条で認められています。弁護人は、家族が面会できないときに面会してくれたり、違法な捜査を防止するようけん制してくれたり、検察官と交渉して早期の開放のために尽力してくれます。逮捕された人と弁護士の間に信頼関係が無ければ弁護活動も暗礁に乗り上げてしまうので、友人知人で、弁護士の知り合いがいる方は、その弁護士を頼ってみてもいいでしょう。
被疑者国選弁護という制度は、一定以上の刑の罪(殺人、放火、傷害、詐欺、窃盗などの法定刑が長期3年を超える懲役若しくは禁錮にあたる罪)で勾留されてしまった場合に、原告として弁護士費用の負担なしに弁護士を付けることができる制度です。資力申告書を出すことで被疑者国選弁護人が選任されます。資力が十分な場合、私選弁護人になる人がいなかった場合に初めて国選弁護人が選任されます。
被告人国選弁護という制度は、刑事裁判への立会いを含む弁護活動を、原則として費用負担なしに弁護士を付けることができる制度です。被疑者国選弁護人が付いていた場合、起訴後、そのまま被告人国選に移行します。また、被疑者国選弁護人が付いていなかった場合、起訴後、罪の重さにかかわらず被告人国選弁護人を付けることができます。
当番弁護という制度は、国選弁護とは似て非なるものです。逮捕された人は法律に詳しくない人がほとんどであり、一刻も早く、弁護士に相談することが重要です。そこで、各地の弁護士会が、逮捕勾留されてしまった人に対し、初回だけ弁護士会の負担で弁護士を派遣し、今後の流れ等について教示をしてくれる制度です。警察の留置係に当番弁護士を呼ぶよう依頼すれば、原則としてその日のうちに弁護士が接見します。接見した弁護士が、そのまま私選弁護や被疑者国選弁護を担当することもあります。
なお、被疑者援助という制度もあります。これは、逮捕勾留されていても軽微な内容であるため国選を使うことができず、お金もないので私選弁護を頼むこともできない場合に、法テラスという組織が弁護士費用を立て替えてくれる制度です。立替となっていますが、多くの場合は償還が免除されています。詳しくは弁護士にお問い合わせください。
保釈制度とは何でしょうか?
【事例】罪を犯して逮捕されても、保釈をすることができると聞きました。保釈とは何でしょうか。どのような手続きで保釈できますか。保釈をすれば無罪になるのですか。
【答え】
保釈とは、保釈保証金の納付を条件として、勾留の執行を停止し、身柄を解く制度です。身柄を解かれると言っても、刑事裁判を受けずに済むということはなく、裁判の日には自宅から出頭することになります。なお、保釈が認められるのは、検察官が起訴した場合(刑事裁判を受けることになってしまった場合)であり、起訴前の保釈は認められていません。
保釈がされるためには、裁判所が決めた保釈保証金を納めなければなりません。保釈保証金の額は、事案によって異なりますが、一般的な事件では200万円前後であることが多いでしょう。保釈保証金が無い場合、保釈支援のための協会から借り入れることもできます(手数料が取られます)。
保釈保証金は、被告人が逃走したり裁判への出頭を拒否したりしない限り、裁判後に返還されます(有罪判決の場合でも同じです)。実際に保釈保証金が没収されるケースはきわめて稀です。
保釈制度は、このように不必要な身柄拘束を解くものですが、どのようなケースでも認められるわけではありません。裁判所は、保釈請求があった場合、罪証隠滅のおそれの有無や逃走の危険性などを検討して、保釈を許すか、許すとしても保釈保証金をいくらにするのかを決めます。事案によっては、いくらお金を積んでも保釈が許されないケースも少なくありません(一般的には、否認している事件で保釈を認めてもらうことは困難なことが多いです)。
保釈請求については、必要書類等もありますので、担当の信頼できる弁護人にお願いするのがよいでしょう。
警察署での面会や差し入れについて
【事例】お恥ずかしい話ですが、私の知り合いが逮捕されて、警察署で勾留されることになりました。面会や差し入れの概要について教えてください。
【答え】警察などに勾留されている人は、法令の範囲内で、警察官立会いの下、接見(面会)を行うことができます。警察署によって異なりますが、弁護人以外の方は、平日のお昼を除く日中に限定されており、時間も15分程度に制約されるのが通常です。警察署によっては面会室が少なく、相当な時間待たされることもあります。なお、面会可能時間は警察署によって異なりますので、事前に警察の留置係に連絡するとよいでしょう。
面会に関して注意してほしいことは、一日1グループに限られているということです。面会に行っても、既にほかの方が面会済みであった場合は面会できないことになりますので、注意してください。
身柄を勾留されると、所持品はほぼすべて留置係に管理されます。最低限のものは支給されますが、十分とは言えません。洋服や下着、本や雑誌などを差し入れてもよいでしょう。
また、差し入れに関して、留置されている人は中で、お弁当や新聞などの買い物ができます。こういった買い物のために、お金を差し入れすることもできます。
人身事故に巻き込まれた際に請求できるお金の項目を教えてください。
【事例】私は、車を運転中、他の車に衝突され、病院に行きました。相手方保険会社に損害賠償請求をしようと思っているのですが、どのような請求ができますか?
【答え】人身事故の場合、主に、以下の項目が請求できます。実際には各々のケースによって異なりますので、弁護士にご相談ください。
① 治療費
事故で負傷した病院代は当然に請求できます。また、病状を証明するための診断書代も当然に請求できます。
ただし、怪我の治療のために鍼灸院や整骨院に行ったり、東洋医学による治療を受けた場合、保険会社との間で、必要な治療であったかが争いになる可能性があります。変わったケースでは、温泉治療費や言語障害の症状改善のためのスイミングスクール費用が問題になったケースがあります。
話し合いで決着がつかない場合、裁判をすることを余儀なくされます。治療の前に、保険会社に確認を取るのも一考でしょう。
② 入通院慰謝料
交通事故に遭って傷害を負った人が病院にどの程度入通院したかによって決められます。たとえば、2カ月入院、8カ月通院した場合、194万円の慰謝料を請求することができます(病状や通院ペースによって上下することはあります。特に、むちうち症で他覚症状が無い場合は基準が大幅に下がり、143万円程度になります)。
保険会社は独自の基準を持ち出し、慰謝料額を低く見積もってきますが、弁護士が入ることによってより有利な基準を使うことができます。
また、保険会社が、不必要な通院だと判断した場合も争いになります。この場合、裁判にせざるを得ないでしょう。
③ 入院雑費
入院雑費は、実際にかかった費用ではなく、1日1500円の基準で認められます(弁護士が入った場合)。実際にかかった費用が膨大で1500円ではカバーできないば場合、領収書を取って請求することになります。
④ 交通費
病院に通院するためにかかった費用も当然に請求できます。もっとも、不必要に交通費を使った場合は、より安い限度でのみ認められることもあります(たとえば、電車を利用することが可能であるのに、タクシーを使用した場合など)。
また、付添人が必要だった場合、その交通費も請求できる余地があります。
⑤ 付添看護費
病院の指示で付添人が必要とされた場合や、それ以外でも付添の必要があるとされた場合(たとえば乳幼児が被害者の場合)、付添看護費が認められます。職業付添人の場合は全額、近親者付添人の場合は1日6500円が認められるのが通例です(実際の態様によって増減します)。
⑥ 後遺傷害慰謝料
上に述べた入通院慰謝料とは別個の項目です。後遺障害(後遺症と急性期症状が治癒した後も、なお残ってしまった機能障害や神経症状などの症状や障害のこと)になってしまった場合に認められます。
保険会社基準と弁護士の基準で最も差がある項目といえます。例えば、もっとも軽傷な14級の場合でも、保険会社の基準は32万円~75万円程度であるのに対し、弁護士基準では110万円になります。
後遺障害の場合、特に弁護士が入る必要性のあるケースといえるでしょう。
⑦ 後遺障害逸失利益
後遺障害になった場合、運動能力が一定割合で喪失したとされます(たとえば、14級では5%の運動能力が喪失したことになります)。この割合に応じて、事故が無かった場合に比べてどの程度収入が減ったかによって決められます。
計算式は複雑で、資料も必要とされますので、正確な額は弁護士に計算してもらうことをお勧めします。
⑧ 休業損害
事故によって仕事を休まざるを得なかった場合、その分の減収を請求できます。現実の収入源が無くても、有給休暇を使用した場合、休業損害が認められます。さらに、ボーナスが支給されなくなってしまったり、昇進に響いた場合、その分も請求できる余地があります。
⑨ 弁護士費用
請求額の1割が認められます。実際に弁護士に支払った額がいくらであっても、請求額の1割になります。ただし、任意の交渉によってはまず認められず、裁判を提起した場合のみ認められるのが一般です。
ワンクリック詐欺とは何でしょうか?
【事例】携帯電話のホームページのサイトでクリックをしていたら、間違って入会画面に接続してしまい、入会官僚の表示が出ました。その後、高額な利用料金の請求が届いています。これは支払わなければならないのでしょうか?
【答え】最近の詐欺の手口として「ワンクリック詐欺」が挙げられます。これは、インターネットを閲覧しているうちに、アダルトサイトや出会い系サイトへ接続してしまい、多額の金銭の支払いを求めてくる詐欺の一類型です。手口は多様化しており、警視庁のホームページでも取り上げられています。
このような料金請求はほとんどの場合不当なものであり、契約の無効を主張することができます。そもそも、画像などをクリックするだけでは契約の申し込みにはなりませんし、利用規約のないものについては契約の無効を主張することができます。
また、電子消費者契約法第3条では、事業者は消費者の申込みもしくはその承諾の意思表示を行う意思の有無について、確認を求める措置を講じなければならないとされています。
利用規約があってもそれに同意する旨の確認措置を講じていなかった場合などは、他の画像をクリックしたことによって入会完了画面が出て、高額の利用料金を請求されても錯誤により無効になります(民法第95条)。
具体的な対応としては、無視するのが一番であり、メールに返信したり、氏名、住所、電話番号などの個人情報を伝えることはは絶対にしてはいけません。脅迫的な方法で金銭を要求しても相手にする必要はなく、もし御心配であれば警察に相談するのもいいでしょう。
既に払ってしまった場合、支払う必要が無いお金を支払ったわけなので、業者に対して返還請求をすることができます。もっとも、利用者個人がサイトや銀行口座から業者を特定するのは容易ではありません。なるべく早めに警察や弁護士に相談した方がいいでしょう。
インターネット上の匿名掲示板で悪口を書かれているようです・・・
【事例】インターネットの匿名掲示板に事実でない指摘を受けたり、悪口を書かれたりしています。どう対処すればいいでしょうか?
【答え】ネット上の匿名掲示板(2ちゃんねるなど)の書き込みについて、管理者といえども、勝手に削除することは認められません。しかしながら、ご質問のようなケースでは少々事情は異なります。
ご質問の事例のように、
① 書き込みにより他人の権利が侵害されていると信じるにつき相当の理由があったとき、
② 被害者からの削除要請があった旨を、書きこんだ者に通知して削除の同意を照会したが7日以内に同意しない場合、
書き込みを削除してもプロバイダ等は責任を負わないと規定されています(プロバイダ責任制限法第3条第2項)。
また、プロバイダ責任制限法には、発信者情報開示請求という制度もあり、書き込みにより権利を侵害され、損害賠償請求のため必要があるときは、書き込みをした者の氏名や住所等の開示を求めることができます(プロバイダ責任制限法第4条)。
具体的に損害賠償を求めるためには、いくつかのステップを踏む必要があります。
まず、掲示板等管理者に対する発信者情報開示請求の仮処分を申し立て、掲示板等の管理者(コンテンツプロバイダ)に対し、発信者に割り当てられていたIPアドレスとタイムスタンプの開示を求めます。これにより、行為者が使用しているプロバイダ等が判明します。
次に、プロバイダ責任制限法第4条に基づき、書き込みをした者の情報を求めた上で、その情報を基に、訴訟や調停などによって、損害賠償を求めることになります。
また、民事上の問題とは別に、名誉棄損罪により刑事告訴することも考えられます(刑法230条1項)。ただし、その行為が公共の利害に関する事実についてのものであり、かつ、その目的がもっぱら公益を図ることにあり、その事実が真実であった場合には、罰することはできません(刑法230条の2)。また、事実が真実でなかった時も、真実であると信じたことについて相当の理由がある場合には、名誉棄損罪は成立しません。
名誉棄損罪は、被害者からの刑事告訴があった時に初めて検察官が起訴することができるようになります(親告罪)。刑事告訴は、警察も受け取りを拒否することが頻繁にあるので、弁護士に作成させて弁護士同伴で提出することが有効です。
なお、民事上の問題と刑事上の問題を問わず、必ず証拠が必要になってきます。証拠がないのでは、損害賠償できないのはもちろん、警察も相手をしてくれません。
インターネット上の情報は、日々失われるものであり、名誉棄損行為を発見した場合、速やかにプリントアウトするなどして証拠保全をしなければなりません。
私は自己破産をしたことがあります。もう一度自己破産できますか?
【事例】私は5年前に、借金を返しきれなくなって自己破産しました。5年後の今、また借金が返せなくなってしまったので、再度の自己破産を考えています。可能でしょうか?
【答え】自己破産を申し立てても、必ずしも債務を逃れられるわけではありません。債務を逃れることができないケース(免責不許可事由、破産法252条第1項)は法律で規定されており、その中の一つに、破産者が免責の申立ての前7年以内に免責を得たことがある場合があります(破産法252条第1項10号)。
よって、この規定を形式的に適用すれば、貴方は自己破産できないことになります。
自己破産を受けるためには、もう少しだけ時間がたつのを待って、7年経過後に自己破産の申し立てをしてみるという方法があります。また、やむにやまれぬ事情があれば、裁判所が免責を認めてくれる可能性もあります(「裁量免責」といいます)。
ただし、前回の免責から原則は7年間は自己破産できないことは事実です。法律も、そう何度も自己破産をされては、債権者の利益を害し、破産者の更生にもつながらないという考えに基づいて決定を出します。
自己破産後の借り入れは取り返しのつかない結果を招くことがありますので、絶対におやめ下さい。
過払金という言葉を聞きましたが、これは何でしょうか?
【事例】私は昔サラ金からお金を借りていたことがあります。かなりの高金利だったと思うのですが、過払金はあるでしょうか。契約書などは何も残っていないのですが、請求は難しいでしょうか。
【答え】サラ金やクレジット会社からお金を借りる場合、利息制限法に違反した部分の金利は無効になります。この無効になった部分について、返済をしていた場合、サラ金やクレジット会社に返金を求めることができます。これがいわゆる過払金というものです。
利息制限法1条では、以下のように利息の制限が規定されています。
1 元金の額が10万円未満の場合 年20%まで
2 元金の額が10万円以上100万円未満の場合 年18%まで
3 元金の額が100万円以上の場合 年15%まで
この規定以上の金利でサラ金やクレジット会社と取引をしていた場合、借金が減ったり、過払金が発生することがあります。
「過払い金を請求したいけど、資料が何も残っていない」という相談はよく受けるところです。資料が何も残っていなくても、ごく一部の例外を除いて、業者に請求することで今までの履歴を開示出来ますので、それをもとに計算することになります。何も持っていなくても、過払請求はできます。
既に取引を終わっている方はもちろん、現在も借金を支払っている人でも、弁護士が介入して利息制限法に基づく計算をしたところ、過払金が発生したケースは無数にあります。
実際に当事務所で扱ったケースでは、某大手貸金業者から100万円以上の請求が来ていたのですが、弁護士が介入した結果、借金がすべてなくなり、それどころか過払金が350万円もの過払金が返ってきたケースもあります。
また、現在の請求書の金利が利息制限法に反しない利息であっても、昔は金利が高かったという業者がほとんどです。その場合でも過払金の回収や借金の減額が期待できます。
サラ金から送られてくる請求書の金額は、正しい金額とは限りません。大手だからと言って簡単に信用したりせず、まずは弁護士にご相談ください。
当事務所の債務整理専門サイトhttp://www.moegi-saimuseiri.com/もご参照ください。
自己破産をすると、財産をすべて失ってしまうのでしょうか?
【事例】自己破産についてお聞きしますが、自己破産をすると住宅や貯金など全ての財産を失ってしまうと聞いたことがあります。これは本当なのでしょうか。本当だとしたら、自己破産をした後、どうやって生活をすればいいのでしょうか。
【答え】ご質問にもあるとおり、破産手続きをした場合、原則として、破産者は財産の管理処分権を失います。財産がある場合、破産管財人が管理することになります。
しかし、破産しても全ての財産を失うとまではいい切れません。法律上、破産後においても破産者が管理できる財産(これを「自由財産」といいます)が定められています。自由財産として法律で定められているのは、以下の通りです(破産法34条3項)。
1 99万円以下の貯金
2 法律上、差押が禁止されている財産
3 破産開始後に取得した財産
このうち、2について補足すると、生活に欠くことのできない財産(家財道具など)は、法律上差押えが禁止されています。すなわち、自己破産をしても、生活ができなくなるほど財産を失うことはないのです。
また、生命保険は原則として解約され、解約返戻金が債権者の配当に充てられますが(解約返戻金の金額次第では自由財産になることもあります)、簡易生命保険の場合、平成3年3月31日以前に契約したものについては解約されません。
さらに、破産法は、「自己破産の拡張」という制度を設けています。これは、上記の自由財産に当たらない場合であっても、破産管財人の意見を聞いて、裁判所が必要により、本来は自由財産ではなく破産管財人が管理処分すべき財産を破産者の手元に残すことを認めてよいというものです。
なお、破産者の財産と破産者の家族や会社の財産とは基本的には関係ありません。密接な関係に立っているからといって、家族や会社の財産を破産者の債務の支払いに提供しなければならないことはありません(連帯保証人になっている場合は除きます)。
最後に、財産を失いたくないからといって財産隠しをしたうえで破産手続開始決定をすると、詐欺破産罪という犯罪になります(10年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金に処し、又はこれを併科)。絶対にそのような行為はやめてください。
自己破産をしようと思っていますが生活にどう影響しますか?
【事例】借金が返せないので、自己破産を考えています。自己破産をすることで、どのようなメリットやデメリットがありますか?住民票や戸籍に載ったり、選挙権がなくなったりするのでしょうか?
【答え】
自己破産をすることで被るデメリットとしては、次のような点が指摘できます。
1 不動産や価値のある動産などを持っている場合、手放すことを余儀なくされます。
2 ブラックリストに記載され、5年から7年程度、金融機関から融資が受けられず、クレジットカードが使用できなくなります。
3 氏名が官報(日本国の機関紙であり、見ている人はあまりいません)に載ります。
4 一定の職業(弁護士や公認会計士、不動産鑑定士、警備員、生命保険募集員、風俗営業者など)に就くことができなくなります。免責が確定した後は資格が回復されます。
5 破産管財人がついた場合、郵便物が破産管財人に転送されます。
6 居住制限があります(破産手続き終了まで)。
よくある勘違いですが、破産をすると、住民票や戸籍に載ったり、選挙権を失ったり、家族の就職に影響したりすることはありません。破産手続き開始の後に得た収入は原則として破産者が自由に使用できます。海外旅行をすることができなくなることも、原則としてありません(例外として、破産管財人が選任された場合の破産手続き中に長期旅行をするときには裁判所の許可が必要になります)。
上にあげたデメリットも実際のところ、さほど生活に影響が出るものはなく、また、他人に知られる心配もほとんどありません。
破産手続きは、一般的にはイメージも悪く、躊躇する方もいます。しかし、破産手続きはこれまでの経済状態を生産する再起のための手続きです。多重債務に苦しんでいる方は、検討するべきと思います。
配偶者の不倫相手に慰謝料を求めたい・・・
【事例】私は、夫と結婚し15年になりますが、調査会社に調査を依頼したところ、1年ほど前から、会社の部下の女性と性的関係をもった交際を続けていることがわかりました。夫との離婚は望んでいないのですが、不倫相手の女性に対し慰謝料請求をすることができるでしょうか。
【答え】配偶者のあるものは、不貞行為(配偶者以外の異性と性的関係を持つこと)を行わない義務が法律上課されています。その結果、第三者が配偶者と不貞行為を行った場合、他方配偶者はその第三者に対して不法行為に基づく損害賠償請求をすることができます(最高裁判所昭和54年3月30日判決)。なお、ここでは問題なっていませんが、離婚の原因にもなります。
しかし、いかなる場合においても慰謝料請求が認められるわけではありません。不貞行為が行われたときに、既に夫婦の婚姻関係が破綻していた場合には、特段の事情のない場合、慰謝料請求をすることはできないと考えられています(最高裁判所平成8年3月26日判決)。
また、不貞行為の発端が不定配偶者が暴行脅迫を加えて関係を強要したというケースで、妻から不貞の相手方女性に対する慰謝料請求が認められなかったというものもあります。
損害賠償請求をするにあたっては、必ずしも裁判所の手続き(調停や裁判)を利用する必要はありませんが、当事者間での合意ができない場合、裁判所の手続きを利用せざるを得ないでしょう。
法律相談において最も質問が多いのが、具体的な慰謝料の額です。慰謝料の金額は、不貞の相手方が配偶者との関係にどれだけ積極的に関わったか、婚姻生活がどう影響されたか(離婚をする羽目になったかどうか)、不貞行為をしていない配偶者の落ち度の有無程度、不貞の態様、子供への影響、反省・謝罪の有無など、様々な要素が影響して決せられます。
具体的な金額については一概には言えませんが、概ね200万円から300万円程度が一応の目安になるでしょう。不貞の態様によっては50万円しか認められないこともあれば、1000万円以上の高額慰謝料が認められることもあり得ます。
慰謝料の額については、参考になる裁判例もありますので、法律相談などで弁護士に相場を聞くことを検討してもいいかもしれません。
夫婦で別の名字を名乗りたいのですが・・・
【事例】私はもうすぐ結婚する予定です。結婚後は名字を変えないといけないのでしょうか。夫婦別姓は許されますか。
【答え】民法750条は「夫婦は、婚姻の際に定めるところに従い、夫または妻の氏を称する」と規定しており、結婚をするときに夫婦のどちらかが結婚前の姓を変えなければならないことが規定されています(夫婦同姓の強制)。
このような規定が設けられた根拠は、夫婦同姓となることによって、対外的に夫婦であることが明確になること、一体感が生まれることなどが挙げられます。
しかし、社会の移り変わりとともに、氏の変更を伴う結婚に抵抗感を感じる人が増えてきており、生活上仕事上の不便・不利益を生じさせることもあります。夫婦同姓とすることも別姓とすることもそれぞれの価値観に基づいて決せられる問題であり、価値観が多様化した現代において一つの価値観を全ての人に強制することは妥当でないという考えが現れました。
そこで、夫婦の両方が姓を変えることなく結婚することを認める選択的夫婦別姓制度の導入が検討され始めています。この制度について、民法改正案が何度か国会に提出されていますが、反対意見も強く、いまだに法制化されていません。
現在の制度において結婚後も姓を維持する方法としては、通称として旧姓を使い続ける方法があります。結婚後も仕事を続ける方は、通称を使用する方も多く社会的にも認知されています。パスポートなども通称併記が可能となっており、仕事上の不便・不利益も一定限度にとどめることができます。
ただし、企業の中には事務手続きが煩雑になるとか社員管理に支障が出るなどの理由から通称使用を認めていないところもあります。さらに、公的な書面では通称が使えない等通称使用の範囲が限られておりますので、使い分けの負担があることは否定できません。
このように通称使用には各種の問題点があり、制度化したとしてもなお限界があると言わざるを得ません。
また、婚姻届を提出せず、事実婚を選択し、夫婦別姓を実践しているカップルもいます。ただし、婚姻届を提出しないため配偶者は法定相続人とならず遺産相続の権利は保障されません(民法900条)。2人の間に生まれた子供は非嫡出子となり(民法772条)、相続分で嫡出子と比べて不利益を被ることもあります(民法900条4号但し書き)。
一方的に婚約を破棄された。慰謝料請求したい・・・
【事例】交際している人と婚約し、結婚の準備もしていたのですが、突然婚約解消の申し入れを受けました。この場合、慰謝料請求はできるのでしょうか。
【答え】婚約は事由意思に基づいてなされる、一種の契約です。婚約をした当事者は、誠実に交際し、婚姻を成立させる義務を負っています。正当な理由なく婚約を破棄した場合、相手方に対して損害賠償責任を負うことになります。
婚約破棄のための正当な理由とは、個別具体的な事情に照らして判断することになりますが、例としては、相手方が行方不明になった場合、相手方が他人と婚姻した場合、性交不能の場合、虐待や侮辱行為があった場合、社会常識を逸脱した言動があった場合などが挙げられます。
逆に正当な理由が認められない理由としては、性格の相性が悪い、親の反対、年齢の差、家柄の違いなどが挙げられます。
損害賠償できる損害には、精神的損害(慰謝料)と物質的損害(新居用の家具購入費用、結婚披露の費用、仲人への礼金、結婚式場や新婚旅行のキャンセル代など)があります。
慰謝料の額の相場は、相手方の違法性の程度によって大きく変わりますが、一般的にはあまり高い金額が認められないのが実情です。
婚約破棄のケースでしばしば問題になるのは、婚約が成立しているかどうかです。これは、結納を済ませているか、指輪の受け渡しがあったかどうか、相手方の両親への挨拶をすませたかどうかなど、様々な事情を考慮して判断されます。
御不明な点がある場合、法律相談で個別具体的に対応することができます。
空き地に駐車して罰金10万円の請求を受けましたが、支払わないといけませんか?
【事例】よく駐車場や空き地に、「無断駐車をしたら罰金10万円」という張り紙を見ることがありますが、実際に無断駐車をした場合、張り紙のとおり罰金として10万円を支払わなければならないのでしょうか。
【答え】仮に、土地の所有者と「無断で駐車した場合は罰金として10万円を払います」という合意をしていた場合は、その通り10万円を支払う義務があるでしょう。一種の契約が成立していると見ることができるためです。しかし、そのような合意をすることはまず考えられません。
そうなると、この張り紙は、何らかの合意を示したものではなく、土地の所有者が一方的に宣告している、一種の警告ということができます。通常、無断駐車をした人は、この張り紙に承諾したものとは評価されませんから、張り紙に従って罰金10万円を支払う必要はないことになります。
もっとも、無断駐車をしても、全く損害賠償をする必要はない、というわけではありません。無断駐車をしたことによって土地の所有者に損害が発生した場合、損害を賠償する義務が生じます。
たとえば、駐車場に無断駐車をしたことによって、ほかの人に駐車場として貸し出すことができなくなった場合、無断駐車がなければ得られてたであろう駐車料金相当額を支払う義務が生じます。また、店舗の駐車場に無断駐車したことによって、店舗の売り上げに影響が生じた場合、その分の損害を賠償する義務が生ずることもあります。場合によっては、10万円よりもずっと多くの損害賠償をする必要があることもあるでしょう。
さらに、無断駐車を続けていれば、車をどかすための裁判を起こされたり、警察が入ったりする可能性すらあります。
いずれにせよ、無断駐車をしてはいけないということです。お気をつけください。