離婚調停手続の概要
離婚調停とは
夫婦間で話し合いが進まない場合や,まとまらない場合,裁判所に間に入ってもらい,離婚に関する問題を解決できるように取り計らってもらうこと(調停)を指します。あくまでも,調停委員を通した話し合いのため,片方が出席を拒否したり,条件などで合意できない場合には,話し合いは成立しない(調停不成立=不調と言います)として終了することになります。その場合,一方当事者の訴訟提起により離婚訴訟へ移行することがあります。 日本では,離婚全体の90%を占める「協議離婚」の次に多い型で,離婚訴訟を起こす前に,必ず調停で話し合いをしなければならない決まりとなっています(調停前置主義)。調停の中で,子どもの養育費,面会交流,慰謝料,遺産分割その他の諸問題についても協議することができます。
申立ての理由
性格の不一致,不貞行為(不倫など),暴力,生活費を渡さない,DV,精神的に虐待する,酒豪,浪費,異常性格,病気,同居に応じない,などが主とされています。離婚の理由は,必ずしもはっきりしたものでなくとも申し立てをすることができます。
手続き
申立ては,管轄の家庭裁判所にて行います。申立書は全国の家庭裁判所の窓口に備えてあります(裁判所のホームページからもダウンロード可能)。 管轄は,原則として,相手方の住所地か,遠方であれば交通の便の良い,夫婦の合意で定めた裁判所(この場合,管轄合意書が必要)です。管轄が不明の場合は,裁判所のホームページで調べることができます。
申し立てに必要なもの
夫婦関係調整調停申立書,申立人の印鑑,申立人の戸籍謄本,相手方の戸籍謄本を準備することになります。
費用
収入印紙 1200 円
連絡用の郵便切手 800~1000円程度(裁判所により金額が異なるので,事前に裁判所に確認すると良いでしょう)
期日の決定
申立て後,裁判所から初回の調停日(期日)についての調整連絡があり,日程が決められます。申し立てから約2週間ほどで,期日通知書(呼出状)が双方に届き, 申し立てから約1ヶ月後に(家庭裁判所の混み具合にもよります),初回期日がやってきます。
弁護士を入れるべきか否か
調停は,弁護士を入れずとも当事者のみで解決できるように設計されています。しかしながら,財産分与や親権などについて争う場合,弁護士を入れて綿密に対応を検討すべきといえるでしょう。調停全体の半数程度の当事者が弁護士に依頼したうえで調停に臨んでいます。
婚姻費用分担請求調停
婚姻費用分担請求調停とは
婚姻費用(「婚費」ともいいます。)とは、生活費や子どもの養育費・教育費、医療費などの婚姻生活を維持するために必要な費用のことです。
夫婦には、同居・別居関係なく、双方の生活レベルを同等に維持する為、婚姻生活が続いている限り、その生活費等を分担し合う義務があります。この分担額は夫婦の話し合いで解決する事が一番良いですが、話がつかず、相手が支払いに応じない時には、裁判所に額や支払方法などを決めてもらい、話し合います。これを婚姻費用分担請求調停と言います。
調停が不成立で終わると、自動的に審判(裁判官が総合的に判断し、決めてくれること)に移行します。
相手が支払いに応じない主なケース
別居中、収入がある方が生活費を出さない、生活費を貰っているが少ない、相手が勝手に家を出て行ったのだから渡さない。
手続き
申立ての方法は、離婚調停の流れとほぼ同様です。婚費分担請求の場合、離婚調停と同時に申し立てる事が出来ます。離婚調停中の場合は、調停において婚費を請求し、別途手続きを行います。
申し立てに必要なもの
婚姻費用の分担請求調停の申立書、申立人の印鑑、夫婦の戸籍謄本、夫婦の収入関係の資料(源泉徴収票、確定申告書、給与明細等)が必要になります。
費用
離婚調停と同様です。
期日の決定
離婚調停と同様です。
審判前の保全処分
先に記した、調停が不成立で終わった場合の、審判に移行する前の申し立てです。
保全処分とは、権利の安全を保ち、その事柄が確定するまでの間、裁判所によって一時的に仮決定される処分(ここでは仮差押え、仮処分など)を言います。
調停は、申し立てても結果が出るまでに時間がかかります。婚費分担請求を行うケースの中には、収入が無く生活費も受け取れず生活に困窮するというように、緊急性の高い場合があります。そのような場合は、応急処置として、調停申し立てと同時にこの処分を申し立てます。裁判所が安全を保つ必要性があると判断すれば、相手に婚費の支払いを命じます(婚費仮払い仮処分)。保全処分が認められた場合、強制執行力があるため、給与の仮差押えも可能となります。
子の引き渡し請求
・子の引渡し請求とは
<離婚前のケース>
別居の際、相手方が強引に子を連れて行ったり、別居中に相手方が突然、自分元から無断で子を連れ去ってしまう。
<離婚後のケース>
相手方が、親権者から子どもを勝手に連れ去ったり、親権者に引き渡さない。
この様な場合に、親が子を自分の側に戻すため、相手方に対して行う請求を指します。
・主な判断基準(=子の利益)
親権者変更調停を参考にして下さい。
・手続き
親権者変更調停と同様です。
・申し立てに必要なもの
子の引渡し調停申立書、戸籍謄本(申立人・相手方・子)、申立人の印鑑が必要になります。
・費用
親権者変更調停と同様です。
・期日までの期間
離婚調停と同様です。
・審判前の保全処分
子の引渡しの審判の確定までは一定の時間がかかります。
その間,基本的には,子供は相手方のもとで生活を継続します。
相手方のもとでの生活環境が特に劣悪,など,通常の審判を待つことが好ましくないケースもあります。
子の引渡について審判前の保全処分を申し立てることで,迅速に裁判所に判断をしてもらうことが可能になります。
ただし,審判前の保全処分は,現在の状況が子の福祉に反することが証拠上明らかであるなど,限られたケースでしか認められません。
親権者変更調停
・親権者変更調停とは
離婚後の親権を変更するために、元夫婦が裁判所で話し合うことです。ただし、一度決めた親権者を変更することは、かなり困難です。「子の利益や福祉」のために必要があると認めた場合のみ裁判所が許可しますので、よほどの事情がない限り、親権者変更は認められません。また、元夫婦間のみの話し合いだけで決定したり、変更する事は不可能です。必ず、裁判所へ調停を申し立てなければなりません。
・判断基準(=子の利益)
例として、子どもへのDV、育児放棄、養育環境の悪化、子の意思、健康・精神状態、親権者が病気にかかり、子の世話が不可能になった、などが挙げられます。
・申立て可能な人
子どもの父母、親族です。
・手続き
申し立ての仕方は、離婚調停の流れと同様です。ただし、管轄する裁判所は、子の住所地になります。複数人いる場合は、子のいずれか1人の住所地を管轄する裁判所で行います。
・申し立てに必要なもの
親権者変更調停申立書、戸籍謄本(申立人・相手方・子)、申立人の印鑑が必要になります。
・費用
子1人につき印紙1,200円
連絡用の郵便切手800~1000円程度(裁判所により金額が異なるので、事前に裁判所に確認すると良いでしょう)
・期日の決定
離婚調停と同様です。
・審判前の保全処分
簡単に言えば、どちらが親権者になるか決まるまでの間、仮に子を自分に引き渡すよう相手に求める審判です。
保全処分とは、権利の安全を保ち、その事柄が確定するまでの間、裁判所によって一時的に仮決定される処分(ここでは子の引渡し)を言います。
調停は、申し立てても、結果が出るまでに時間がかかります。親権者変更に関しては、親権者ではない方が、子どもを連れ去る恐れがあったり、子どもの心身に大きな危険が及ぶ様な、緊急性の高い場合があります。その様な場合は、応急処置として、調停申し立てと同時にこの処分を申し立てます。裁判所が子の利益のため必要があると判断すれば、相手に子を引き渡すよう命じます。この判断には強制執行力があるため、認められた場合、親権者の役目を停止し、代わりの親権者を選任する事が出来ます。